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長崎・眼鏡橋そばに「陶器製のコイ庭園」-陶芸教室の生徒作品

コイを眺める川口センター長

コイを眺める川口センター長

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 長崎・眼鏡橋近くにある賑橋パーキングセンター(長崎市栄町、TEL 095-821-7828)で3月17日、陶器製のコイが泳ぐ庭園が完成した。

「永遠の愛」でキスする2羽の鳥

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 同所には以前から「枯れ山水」を模した庭園があったが、すぐ前にある中島川に玉砂利を投げ込むいたずらが続き、川口親弘センター長をはじめ職員たちが頭を痛めていた。

 「ささやかな枯れ山水ながら、見るのを楽しみにしている人たちもいた。それなのに中島川をのぞき込むと、川底が白く見えるほど玉砂利が投げ込まれている。何とかしなければ」と思った川口さんは、関連施設で施設管理を担当する磯埜(いその)栄司さんに相談。磯埜さんらは「玉砂利を投げられないように固めて、ついでに庭園としてもっと整備して生まれ変わらせよう」と方針を決めた。同団体が運営する県内各地の施設から集めた作品や、職員らからコレクションを提供してもらい、今年1月中旬から2月初旬にかけ、磯埜さんらが中心となって手作り庭園をほぼ完成させ、この日最後の仕上げを行った。

 同所を運営する社会福祉法人「長崎厚生福祉団」(魚の町)は、県内各所で特別養護老人ホームや介護老人保健施設、ショートステイやグループホームなど多数の施設を運営している。庭園のメーンとなる「コイ」は、関連施設「シンフォニー稲佐の森」(大谷町)で行われている「陶芸教室」の生徒たちの作品15点を使用。同教室は毎月第1と第3日曜日、地域の人たちに開放して開いている。プロの作品3点とともに庭園に設置した。そのほか、「だんだん広がる水の波紋を表現した」石臼や、魚釣りをするかっぱ、ゆっくり歩くカメなど、幅およそ1メートル、長さ22メートルほどの庭園の随所に「さりげなく」置いている。パーキングの壁面には手作りのプレートも取り付けた。

 「ちょうどランタンフェスティバルの時に、ほぼ完成した庭園をいじっていると外国人観光客がたくさん集まってきた。何枚も写真を撮られてモテモテ。こんな体験はしたことがない」とうれしそうに話す磯埜さん。「昨年2月に亡くなった前理事長(故・千々石源二郎さん)が、多くの人の癒やしになればと長年続けてこられた活動をみんなが引き継いだだけ。何とか一周忌に間に合った。きっと天国でも喜んでいる」とも。

 3月24日に64歳の誕生日を迎える磯埜さんを職員らは「見かけによらずロマンチスト」と評する。庭園の中に大中小の「ハートストーン」を設け、上流に向かって「恋(コイ)がだんだん大きな愛に変わっていく」というラブストーリーを展開。それぞれのハートの裏側には、各施設で働くさまざまな年齢の女性たちに「乙女の願い」を書き込んでもらい埋め込んだ。磯埜さんは「女性はいくつになっても心は乙女の部分を持っている。その純粋な願いを40人の女性たちに書いてもらった。運んできた男性職員も、その中身は誰一人知らない。読むことができるのは、ここが遠い将来解体される時だけ」と話す。

 ラブストーリーは下流から上流に向かって「出逢いの愛」「流されぬ愛」「膨らむ愛」「万年の愛」「結ばれた愛」「永遠の愛」と続く。下流で出会った2羽の鳥は当初少し離れている。上流に向かってハートがだんだんと大きくなり、途中で登場するカメも大きくなる。ゴールで鳥たちは仲良くキスをし、その横にはキスをする小さな鳥たちも添えられている。陶芸教室に通う送迎バスのルートにもなっているため、「私が作ったコイがある」「今度、家族に見せよう」と、手作りコイの話で盛り上がるという。

 完成披露に駆け付けた千々石源士理事長は「われわれは、利用していただく方はもとより、地域の人たちに支えられて生かされている。これからも地域の人たちに喜んでもらえる取り組みを続けていきたい」と話す。5月にはパーキングの壁面にこいのぼりを飾る予定。

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