長崎で「女の一生」挿絵版画展 映画「深い河」上映も 

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 長崎ブリックホール(長崎市茂里町)2階ギャラリーで現在、作家の故・遠藤周作さんの小説「女の一生」挿絵版画展が開かれている。

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 同展は1865年3月に大浦天主堂(大浦町)でキリシタンが発見された「信徒発見」150周年と戦後70年を記念して長崎市遠藤周作文学館(東出津町)が企画。4月4日から5月24日まで同館で、5月30日からブリックホールで展示している。

 遠藤さんは1923(大正12)年、銀行員の父・常久さんと東京音楽学校の学生だった母・郁さん(1921年に結婚)の次男として出生。後に安田工業社長などを歴任した父は白水甲二というペンネームで「きりしたん大名 大友宗麟」という作品を発表している。父の転勤で旧満州の大連で小学校に入学。4年生の時に作文が新聞に掲載される。その後、両親の離婚で母親に引き取られて帰国した。私立灘中学(旧制・神戸市)4年生修了時から複数の高校や大学を受験するがいずれも不合格。1942(昭和17)年に東京帝国大学を卒業して逓信省に入省した兄の仲介で父の家に移住する。翌年、ようやく慶応義塾大学文学部予科に補欠合格するが、医学部予科を受験したものと思っていた父から勘当されて生活基盤を失う。

 友人の家に居候して家庭教師などのアルバイトをしながら生活費を稼いだ遠藤さんは、徴兵検査に合格したが肋膜炎などで入隊が遅れたため入隊直前に戦争が終わった。戦後、復学してカトリック文学に傾倒。その後、勘当を解かれて父の家に戻った遠藤さんは1954(昭和29)年4月から文化学院の講師を務め、本格的に作家活動を始めた。そのころから小島信夫さん、三浦朱門さん、吉行淳之介さんなど多くの作家仲間と知り合っている。「キリスト教と日本人」を生涯のテーマとして数多くの作品を生み出した。1996(平成8)年9月28日、肺炎のため死去。享年73歳。

 1980(昭和55)年11月から朝日新聞に連載された「女の一生」は長崎が舞台の小説。第1部「キクの場合」は幕末から明治初期、第2部「サチ子の場合」は第二次世界大戦時を背景に描かれている。物語の背景にはキリスト教があり、それぞれの主人公が血縁関係にあるという共通点を持つ。同展では当時挿絵を描いた田代素魁(そかい)画伯の作品から選んで展示する。

 6月21日は同館国際会議場で遠藤さんの同名小説(1993年発表)原作の映画「深い河」(熊井啓監督)を上映する。出演は秋吉久美子さん、奥田瑛二さん、井川比佐志さん、菅井きんさん、三船敏郎さんほか。13時上映開始。定員は400人。入場無料。

 開館時間は9時~22時。6月28日まで。

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