長崎県内各地で「精霊流し」 爆竹の音とともに3500隻

モップの精霊船を担ぐ長田瑞江院長(右)

モップの精霊船を担ぐ長田瑞江院長(右)

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 長崎県内各地で8月15日、死者の霊を精霊船(しょうろうぶね)に乗せて弔う精霊流しが行われた。

眼鏡橋に近い賑橋を渡る精霊船

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 精霊流しは長崎県内各地や佐賀県、熊本県の一部地域で見られる伝統的な仏教行事で、8月15日が初盆に当たる死者の霊を弔うため、家族や友人が精霊船を曳いたり、担いだりして街を練り歩く。長崎市では1871(明治4)年に精霊船を海に流すことが禁止された。

 1974(昭和49)年に長崎市出身の歌手・さだまさしさんが歌う「精霊流し」がヒットしたことで広く知られるようになった精霊流しは今年、県内各地で約3500隻が練り歩く。

 同日夕方から鐘や大量の爆竹を鳴らし、「ドーイ、ドーイ」という掛け声を発しながら、そろいの法被(はっぴ)やTシャツを着た担ぎ手たちが街を練り歩く。遺族がいない、担ぎ手がいないなどの理由で単独では精霊船を出せない人たちのために「もやい船」の風習があり、自治会や企業などの団体が合同船を出す。「もやい」とは長崎を含む九州各地の方言で、共同で一つのことを行ったり、一つのものを所有したりすることを意味する。葬祭場の法倫会館(長崎市茂里町)は2001年から「もやい船」を出しており、今年は約200人を弔う。

 今年1月に看板犬モップが死んだ「さくら整体」(大橋町)の精霊船は、長田(おさだ)瑞江院長の夫・友光さん(67)による手作り船だ。警察官を退職後、長崎市外海町に工房を構えて木工彫刻師となり、伝統芸能の浮流(ふりゅう)面の修復などを手掛け、地元の大野神社に天狗の面や獅子頭を奉納する。友光さんは精霊船の帆に菩薩を、船体には天女を描き、同院の看板メニューである「ビワ葉温灸」の容器なども全て手作りして船に乗せた。

 瑞江さんは「今までたくさんの思い出をくれたモップのため、心を込めた初盆にしたい」と話し、家族らとともに笑顔で精霊船を担ぐ。

 街を練り歩いた後の精霊船は各地の「流し場」で処分される。長崎港内の大波止にある流し場では精霊船を解体する大型重機が設置されており、盆提灯や遺影、位牌などを取り外した後、担ぎ手や遺族が合掌して見守る中、解体される。長崎市中心部の精霊流しは23時まで続き、路上に散乱した爆竹などは清掃業者により翌朝までに撤去される。

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