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長崎の坂道で対州馬の荷運び再現プロジェクト-被災地への励まし込める

江島さんが描いた坂の街を闊歩する対州馬のイラスト

江島さんが描いた坂の街を闊歩する対州馬のイラスト

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 かつて坂の街長崎で荷役の主役だった日本在来馬「対州馬」(たいしゅうば)の荷運びの様子が3月10日、長崎市伊良林地区で再現される。

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 「長崎の坂道で、対州馬の荷運び再現プロジェクト」と題して、若宮稲荷神社の一の鳥居付近~亀山社中~風頭公園まで対州馬が荷物を運ぶ。途中、若宮稲荷神社の境内で若宮保育園の園児や親子との対州馬交流会も予定。

 同プロジェクトは、対州馬の保護育成を願って、長崎在住のイラストレーター江島達也さん、対馬で対州馬の調教をしている篠原由美恵さん、大村の霜川剛さんらで構成する長崎対州馬応援団が企画運営する。荷物を運ぶ対州馬は、「WARANAYA CAFE」(ワラナヤカフェ)(大村市)を経営する霜川さんが子どもたちに生物多様性について学習させる取り組みのために同店で飼育している「里子(さとこ)」を活用する。

 荷物には江島さんの著書「僕の子ども絵日記~ながさきの四季」200冊と、篠原さんと対州馬振興会が共同制作した「対州馬パンフレット」を積み、交流会の参加者や沿道の人へ無料で配布する。

 対州馬は対馬原産の在来種。長崎特有の立地条件下において、細い坂道や階段が続く山の上に家を建てる際の資材運搬の主役だったが、近年そうした環境に家が建たなくなり需要が減ったことから、2009年2月に荷役を仕事としていた馬と馬方が引退。以来、その姿は長崎から消え去っていた。対州馬自体も個体数の減少が続き、現在対馬で飼育されている数は30頭に満たなくなり、種の維持という観点からも絶滅の危機にひんしているという。

 昔の長崎の懐かしい風景をイラストに書き起こしてきた江島さんはイラストの取材を通して、坂の上の古い住宅街に増える空き家や空き地に街の衰退を感じるとともに、震災による先行きの不安などに胸を痛めてきた。「原爆後、復興とともに坂道に家が建ち300キロもある荷物を背に馬が汗して坂道を登っていた時代は街の『希望』そのものだったのでは」という思いを抱くようになり、坂の街に対州馬を復活させるべく、かつての馬方や対州馬の姿を求めて県内を訪問してきたという。

 「坂の街に空き家や空き地が増え、坂道を行き交う人の姿や子どもたちの姿が減っている。不況や震災などで未来への希望を見失いかけているようにも見える。貧しかった時代には皆で助け合って生きていた」と同会代表の江島さん。「小柄で温厚な性格の対州馬が重い荷物を背負って坂道を登る姿は、その時代の温かい記憶を呼び起こし、明日への活力になると信じている。このニュースが震災被災地にとっての励ましになればと思い、1回目のプロジェクトを震災が起こった日の前日に実施することにした」という。

 当日は、10時30分ごろ出発し12時30分ごろの到着を予定する。同プロジェクトは、以降も場所や設定を変えながら定期的な実施を予定。詳しくは江島さん(TEL 095-857-5236)まで。

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