長崎大学熱帯医学研究所が「エボラ出血熱」の公開講座

公開講座の様子

公開講座の様子

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 メルカつきまち(長崎市築町)ホールで8月26日、市民公開講座「エボラ出血熱とは何か?」が開かれた。主催は長崎大学熱帯医学研究所(以下、熱研)

質問に答える安田教授(中央)

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 熱研の安田二朗教授が「エボラ出血熱とはどのような病気か?」「何に気を付ければよいのか?」「日本と長崎は安全か?」などの視点から講演した。

 熱研は、熱帯医学研究では国内唯一の公的機関で、ケニアとベトナムにも拠点があり感染症などを研究している。世界保健機関(WHO)からWHO協力センターとして指定されており、今年8月には熱研の准教授がエボラ出血熱の対策要員としてスイスのWHO本部へ派遣されている。

 安田教授は新興感染症ウイルスの専門家で、エボラウイルスについては10年以上の研究歴がある。安田教授によれば、エボラ出血熱は1976年にザイールで発生が報告されて以来、「中央アフリカ」「東アフリカ」で20回以上の集団感染が起きており、今年のように西アフリカで発生したケースは初めてだという。8月20日時点で「ギニア」「シエラレオネ」「リベリア」「ナイジェリア」の4カ国で合計2615人が感染し、そのうち1427人が亡くなっている。

 「エボラ出血熱の致死率は極めて高いが空気感染することはない。感染を予防するには患者の血液、体液、排せつ物に直接触れないこと。意外だろうがエボラウイルスは水道水、洗剤などで簡単に壊れる」と安田教授は話す。特効薬やワクチンは存在しないが、水分補給や点滴、栄養剤、解熱剤などの投与で回復することも少なくないという。「それでも西アフリカで猛威を振るっている原因は、現地のぜい弱な医療体制や行政の対応の遅れ、住民の栄養状態の悪さ、家族による感染者の隠ぺい、さまざまなルールが徹底されないことなど独自の事情がある」とも。

 「日本の医療体制は現地と比較にならないくらい整っている。国民の栄養も十分足りており、教育レベルも高いことなどから同様の感染拡大は考えられない」と講演を締めくくった。

 講演後、参加者からは質問が相次いだ。「国際便の飛行機でトイレの便座から感染に気づいていない潜伏期の人のウイルスに感染する危険性はないか?」という質問に安田教授は、「潜伏期の場合、ウイルスの排出は少ないのでリスクは低い。エボラウイルスは水で破壊されるため、水を含ませたトイレットペーパーで便座を拭けば十分だ」と答えた。

 講座終了時、「エボラ出血熱に関しては診断・治療にいくつかの成果が見られ、特効薬やワクチンの開発も期待されている。熱研もエボラ出血熱をはじめとする感染症制圧のため、関連機関と協力しながら日々研究を続けている」とまとめた。

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