新生「ナガサキ・アーカイブ」をリアル体験-浜町アーケードに体験ブース

iPadで画像を楽しむ田賀農虎太郎(たがのこたろう)くんと母の有希さん

iPadで画像を楽しむ田賀農虎太郎(たがのこたろう)くんと母の有希さん

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 長崎・浜町アーケードに10月20日、67年前の被爆体験をパソコンや携帯端末で体感する「ナガサキ・アーカイブ」の体験ブースが設けられた。

トークセッションの様子

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 体験ブースは10月27日に始まる「長崎国際平和映画フォーラム」のプレイベントとして「長崎新社会人ネットワーク」が主催。「ナガサキ・アーカイブ」は2010年7月、首都大学東京(東京八王子市)の渡邉英徳准教授と長崎出身の被爆3世らや同大学の学生らが中心になって完成させたプロジェクトで、被爆当時の風景写真などを「Google Earth」上で立体的に俯瞰(ふかん)しながら被爆者の写真や体験談を閲覧できるサービス。インターネット環境さえあれば誰でも無料で体験できる。今年8月にバージョンアップが行われ、ビデオ証言の追加や使いやすさの向上などに加え、iPhoneやiPadに向けた専用アプリの提供も始まった。

 体験ブースではアプリを実装したiPadに注目が集まり、多くの通行客が足を止めて体験していた。iPadのカメラを周囲に向けると、撮影している画面の中に現在地からアーカイブにマッピングされている場所までの距離などの情報が表示され、67年の年月経過を超えて被爆体験を身近に感じることができる。iPadを触って楽しんでいた田賀農虎太郎くん(4)の母、有希さんは「子どもには意味は分からないだろうが、写真が切り替わるのが楽しくて気に入っているようだ。意味は分からなくても楽しめて勉強になる道具があるのはいいことだと思う。楽しむ中で少しずつ成長しながら、将来意味を知って平和を大切にする人に育ってくれれば」と話す。

 12時40分~と16時~の2回、体験ブース隣の特設ステージで「どうやって残す?伝える?」をテーマにトークセッションが行われ、渡邉准教授のほか、Nagasaki Archive制作委員会の鳥巣智行さん、朝日新聞長崎総局の花房吾早子さんが登壇した。渡邉さんは「被爆の原体験がない若い人が伝承していくためにはどうすればいいかを真剣に考える必要がある。広島では高校生に被爆者の証言を聞き取る作業をさせたことで、今まで新聞記者などのプロには一度も話したことがない被爆者でも高校生には話すという例が出てきた。聞き取りの体験の記憶を次の世代に伝える『新しい世代』を作り出す必要がある」と提唱した。

 高校生1万人署名の第1期生で被爆3世でもある鳥巣さんは「現在、本業は広告の仕事をしているが、人々の記憶に残すという点では同じ。歴史的なことはどうしても退屈になりがちだが、面白さや感情に訴える新しい伝え方を考え出すことで先入観をなくして積極的に伝わるように工夫することが大切」と訴えた。花房さんは「私は千葉出身で去年来崎したが教科書に載っている程度の知識しかなかった。朝日新聞のナガサキノートは若い記者が被爆者に聞いて書くことを主眼にしており、67年もたっているのに昨日のことのように声が詰まる人々を前にあらためて考えさせられた。このアーカイブを地元だけでなく世界に広めることが重要だ」と力を込める。

 トークセッションを聞いていた市内在住の40代の男性は「テレビや新聞にも取り上げられたそうだが、こんなものがあるとは全く知らなかった。子どもたちにもぜひ教えたい」と話す。渡邉さんは「このアーカイブは全ての人の目に触れるコンテンツであることに価値がある。しかしインターネットは決して万能ではない。東京を中心に進めるのではなく、地元の市民で盛り上がって新しいデータをどんどんアップできるコミュニティーを作ることが大切。長崎と何の関係もなかった私でも夢中になって作ったように、ナガサキ・アーカイブを目にした人が影響を与えられる側から影響を与える側へと広がっていけば」とも。

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