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第5回推薦編「FP・太田美樹さん」

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(太田さんが趣味で撮影する写真にも多くの「食」が登場する)

太田さんは長崎のご出身ですか?

そうです。長崎生まれ、長崎育ちで銅座界隈で育ちました。
実家は「長崎宝雲亭本店」という一口餃子の店です。だから、商売人の中で育ちました。両親ともに非常に「食」にこだわりがあり、食材は全て市場で調達して、スーパーで買うことはほとんどありませんでした。
ということは、生まれてからずっと食とは切っても切れない生活を?
そうですね。父が特に食べ物にはうるさかったですね。私が小さい頃は景気がいい時代でしたから、本当にいい食材に囲まれて育ちました。父の教えは「生きているものを食べろ」。いいものを食べれば働く意欲が湧いてくるし、生活エネルギーの原点だと教えられて育ちました。
だから食に関しては手を抜きたくないという考えがずっとあって、出張などの時は外食することもありますが、長崎にいる時は外食にお金をかけるよりも地元の魚屋さんや八百屋さんでいいものを買って、なるべく素材を生かした料理を食べるようにしています。外食は少なめです。
私も取材でいつも感じるのですが、長崎は食材に恵まれていますよね。
そうです。特に市内中心部は、スーパーに行かなくても新鮮で豊富な食材が揃います。今、しそとか唐辛子などの薬味やハーブなどを自宅で育てていますが、実はこれらを使って本格的な料理が作れます。本当は誰でも本物の食材を使った料理がちゃんとできるんです。必要なのはそれを意識して行うかどうかです。
そうですね。今の自分たちの回りは、本物だと思っていても実は加工されている食材が溢れていますからね。大事なことかもしれません。
例えば、私がいつも使う魚屋さんは、いけすがあって泳いでいる魚を網ですくって目の前で捌いてくれます。時間がないときは、加工されてパックに入ったものを買うことももちろんありますが、できる限り専門店で買っています。食の大切さは常々子どもたちにも伝えています。
私が子ども時代から料理好きだったように、2人の子どもも料理が大好き。本当にいい食材を感じる「舌」を育てられて良かったと思います。

(太田さんが旅行先の台湾で撮影した写真。食のパワーを感じさせる)
舌って本当に大切ですよね。そう言う私自身は味音痴なんですが(笑)。
あははは。そうなんですか?(笑)。娘は最近の子に多いアレルギー体質で、添加物が入っていると反応を起こします。添加物の入ったものをコンビニなどで買って食べると、お腹を壊したり、肌荒れしたりするんです。特に冷凍食品が小さい時から食べられない体質です。ウインナーとベーコンくらいは何とか大丈夫なんですが。
お弁当作りが大変で、便利な加工食品も最初は少し使ったのですが、舌が凄くピリピリするとか、薬品の変な臭いがすると子どもたちが訴えてきますから、そのうち使わなくなりました。長崎はかまぼこがたくさんありますが、あるメーカーのかまぼこはおいしいと言って食べますが、あるメーカーのものは薬臭くて食べられないと言います。小学生の息子も本当に舌が敏感です。だから弁当づくりが正直言って苦痛です(笑)。
(台湾でのワンショット。色鮮やかなフルーツが印象的)
そういう大変さは確かにありますね(笑)。
でも、それは自然のものを食べさせてきた結果なのかもしれません。酢などの調味料も合わせではなく純粋のものを使っていますし、油はつばき油を使っています。体質改善のために使い始めたのですが、子どもには影響が大きいようですね。大人は添加物が染みついていますから、そこまでは敏感には感じませんが、子どもはテキメンに感じるようです。自然の恵みをいただくという考え方を父から叩き込まれましたが、振り返ってみても本当に大切な考えだと思います。
食がその人の血や肉を作る訳ですから、その考え方は大切ですね。
最近、食育が大切だと言われますが、もともと食が全ての源だという根本がぶれなければ、昔に比べたら大人でもイライラする人が多かったり、キレやすい子どもが多いなどの情緒に関する問題も解決すると思います。ビタミンやカルシウム不足になることがありませんから。
共働きで、母親らしいことはあまりできていませんが、食事をきちんと作って提供するということを通じて、私が両親からそう育てられたように、娘も息子も「食の大切さ」を受け継いでくれているようです。
受け継ぐって、なかなか難しいけど大切ですね。
もし私が独身で独り者だったらやってないと思うんですよ。自分だけなら外食かコンビニです(笑)。夫と子どもたちがいて、その健康と食育を考えてずっとやってきた結果、味が分かるという子どもの感性を育てられたと思います。
(自ら撮影した写真を使ってCDサイズのカレンダーを作る太田さん)
太田さん自身は、子ども時代どんなお子さんでした?
味にうるさかったです(笑)。
やっぱり(笑)。うるさい給食係みたいなイメージを勝手に想像(笑)。
あははは。小学生の頃から料理が大好きで、特に中高生の時はアップルパイ、シュークリーム、チーズケーキなどしょっちゅうお菓子を作っていました。作るのは好きなので楽しかったですね。
(太田さんの手作り菓子)
それなら、子どもに与えるお菓子には困りませんね。
でも今は料理に手いっぱいで、お菓子は1カ月に1度作るかどうかです。
何かスポーツしたり、普段の生活で心がけていることがありますか?
私は中学でバトミントンをやりましたが、今はゴルフに嵌っています(笑)。小学生の息子は、夫の影響で4歳からラグビーをやっているので、練習の後は、しなやかな筋肉をつけるために鶏肉や豆腐を食べさせています。
また、娘の体質改善のために、ビタミンや酵素を取り入れるために、毎日人参とフルーツを絞った生ジュースを作っています。普段の料理も野菜を7、肉や魚を3の割合で作ります。主人は今50歳ですが、おかげで血液検査はいつも良くて一度もひっかかったことがありません。
(太田さんが娘さんに用意したひな祭りのお膳を自らパチリ)
なるほど、勉強になります。それにしても、かなり詳しいですね。
私、実は短大の食物科出身ですから(笑)。入学したきっかけは、料理が好きなので何となく食物科かな?という程度だったのですが、料理は好きでも基本知識があるかどうかで面白さが全然違うことに入学してから気づきました。例えば熱をどれくらい加えると分解するとか、知っているのと知らないのとでは雲泥の差です。それを知っておくと、また違う角度で食事作りが見えてきて、豆腐を原料から作ってみたくなったり、チーズも原料から作りました。でも、やはり続きません。面倒ですから(笑)。
そこで行きついたのが、おいしい豆腐屋さんを探したり、おいしいチーズ屋さんを探すことだったんです。その方が楽で楽しい(笑)。手軽に行ける範囲内に専門店があれば、本物の食材を家庭で食べられます。
例えば「うに」を寿司屋で食べようとすると、2貫で1,000円以上しますが、「うに」を魚屋さんに頼んでおけば、1家庭分で1,000円~1,500円で食べられます。長崎は新鮮で安い食材が豊富にありますから。
「うに」は買ったことありませんが、そんなに安いんですか?
スーパーで買う人が多いんですけど、魚や肉はスーパーより専門店で買った方が安くておいしいと思いますよ。パックじゃないから、分量も自由に頼めるし、買いすぎることもありません。スーパーだとついつい余計なものを買ったりするでしょ?(笑)。
スーパーとの大きな違いはコミュニケーションの場でもあること。調理の方法を気軽に教えてもらえるし、それがまた役に立つんです。まとめ買いするとどうしても長持ちする根菜中心になったりしますから買い物もほぼ毎日行きます。
いつも行く八百屋さんが、通常では売り物にならない「キズもののニンジンやリンゴ」などの野菜を生ジュース用に取り置きしてくれるんです。それをかなり安く分けてもらえるので本当に助かります。長崎に住み続けたいという気持ちになる原点の一つは、この長崎の人の温かさにも支えられている恵まれた食生活にあると思います。
素晴らしいポリシーですね。ところで、ファイナンシャルプランナーになられたきっかけは何ですか?
全くの偶然です。元々、事務職募集ということで保険会社に誘われて就職したんですけど、実際は営業だったんです(笑)。それが平成9年だったのですが、最初はもう辞めようと思ったことも何度もありました。でも2年目くらいから気持ちを切り替えたら仕事が面白くなってきたんです。その中で自分の会社の保険だけを売るのはお客さまに対して中立ではないと思いました。
そこで平成15年に独立していろんな会社の保険を扱うようになりました。ファイナンシャルプランナーの資格を取って、お客さまの家計の見直しや、住宅ローンの相談に乗るようになり、金融に関する講師の仕事もやっています。保険会社のために働くのではなく、お客さまの利益のために働きたいという思いが強くて独立したんです。当時は複数の保険を扱う代理店はとても珍しい時代でした。
しかもファイナンシャルプランナーは手数料ではなく相談料という対価をいただく仕事ですが、相談料だけで仕事が成り立つためには信頼関係とクオリティーが必要です。お客さまから、わざわざお金を払ってまで相談したいと思われなければ始まりませんから、いろいろな工夫をしながら今に至っています。
(楽しく仕事に取り組むことを意識すれば苦にならない)
とても誇りをもって仕事に取り組んでおられるのが伝わります。
そうですか?(笑)。保険会社時代、「いやな仕事だよね」と言う同僚が少なくなかったのですが、私は仕事の内容そのものがいやな仕事だと思ったことはありません。事務職のつもりで入ったので、違っていていやだと思ったことはありますが(笑)。
だから仕事って、「自分自身が、どう考えて、どう取り組むのか」で全く違ってくると思うんですよね。今は自分が目指していた「お客さまに対して中立を貫く」という目標が達成されているので、全くストレスがありませんね。中立を保つために、ちゃんと相談料をいただいてアドバイスしています。そうしないと中立ではなくなりますから。
確かにそうですね。相談をする方は主にどんな人たちですか?
ごく普通の方々ですよ。住宅ローンの相談も多いですからね。富裕層でも何でもなく、世帯年収で言うと、500万円から1200万円くらいかな?公務員さんやサラリーマンの方が多いですね。共働きの方も多いです。FPの仕事自体が本来はそういう人たちのためのファイナンシャルプランなんですよ。よく勘違いされているのは、富裕層の資産運用みたいなイメージです。
例えばちゃんと計画を立てると、35年の住宅ローンが25年で済んだりとか、保険料が月額5万円かかっているのが、4万円で済んだりとか。これはほとんどの人たちに必要な情報だと思いませんか?保険料のカット、住宅ローンのカットで全体で1,000万円くらい違ってくることは少なくありません。
私の場合はだいたい2~3時間の相談1回で完結させますから、内容によって5,000円とか1万円、2万円、3万円くらいの相談料だったら、安いと感じていただけるんです。1回につきいくらという設定はしていません。私が長年積み上げてきた知識が役立つのなら、こんなにやりがいのある仕事ってなかなかないと思いますね。
「太田美樹」で検索するとホームページが出てくるので、そこにご相談料金や内容なども表示しています。紹介かホームページ経由で相談に来られる方がほとんどですから、それだけ需要があるということですね。こういう時代なので、間違った情報も、必要ない情報も巷に溢れてしまっています。その方にとって、本当に必要で有効な情報だけを選んでアドバイスするということは、とても有意義なことだと思っています。
ありがとうございます。では、太田さん一押しのお店をご紹介ください。
はい。それは眼鏡橋のすぐ横にある「ピアチェーボレ」さんです。シェフの今道さんは、私が短大時代にアルバイトしていた「バラタ」というインド料理店のママの親戚に当たるんです。時々手伝いに来てくれていました。彼が長崎にいなかったときは音信不通だったのですが、彼が店を始めてからまた交流が始まりました。
私は彼のお母さんとも仲がいいし、ファミリーとしてもお付き合いが深いんです。彼の食に対する考え方が私の考えにも近くて、とても共感できるんですよ。彼も仕事を愛していますからね。ジャンルにとらわれず、いつも新しい料理を展開しており、とてもいい店です。
縁が深いお店なんですね。何か心に残るエピソードは?
実はちょっとしたエピソードがあります。私の息子が病後にカニのパスタが食べたいと言い出したんです。ピアチェーボレに行って、「カニのパスタが食べたいって言ってるんだけど、できる?」って今道シェフに聞いたら、たまたまその日にワタリガニが入っていたらしく、カニをまるまる一杯使ってパスタを作ってもらいました。
息子は食欲がほとんどない状態だったんですが、このパスタがよほどおいしかったらしくて、5分くらいで完食しました(笑)。後から聞いたら、今まで生きてきた中で一番の食べ物だと話していました。
まだ小学生ですけど(笑)。
素晴らしいお話ですね(笑)。おすすめの料理などはありますか?
私はこの店の醍醐味はコース料理だと思います。その日に入った食材を使って今道シェフの感性で作り上げていくコース料理。もちろん人それぞれ好みがあるから、ほかの人がどう感じるかは分かりません。さきほどの息子の話ではありませんが、食に対してひたすら前向きで一生懸命に取り組む彼の姿勢が大好きだし、尊敬しています。本当にいつもブレていないというか、食に対して常にひたむきです。これからもいろいろ新しい境地を開いてくれると信じています。ぜひ多くの人に味わってもらいたいですね。
太田さん。今日は貴重な時間をありがとうございました。
こちらこそ、楽しかったです。ありがとうございました。
生まれたときから食に徹底的にこだわる環境で育った太田さん。ご自身の食に対する姿勢をたっぷり聞かせていただきました。
次回は太田さんがその考え方に共感するという「ピアチェーボレ」を取材します。

■太田美樹さん
長崎市生まれ。 実家は一口餃子の長崎宝雲亭本店。
保険会社勤務を経て、2003年にFP、保険代理店として独立。
情報誌の保険・マネー講座への執筆やテレビなどの地元メディアでも講師として活躍。2児の母

ファイナンシャルプランナー太田美樹の「マネーコンシェルジュ」

「長崎グルメ探訪」とは

巷ではグルメ情報が氾濫しています。ここ長崎でも例外ではありません。
情報は多岐にわたり、独りよがりになってしまったり、誰のためか分からないような情報も少なくありません。

そしてグルメ情報の多くは、その道のプロであったり、毎日のように美食に触れる人物だったりして、受け取る人の考え方にもよりますが、受け手との立ち位置がそもそもかけ離れている場合もあります。

「長崎グルメ探訪」は、既存のグルメ情報とは一線を画すことを目標にしています。
一般の、読者代表の方の感覚で行きつけやお気に入りの「ちょっといい店」をご紹介いただいて、「長崎にもこんな店があるんだ」とか「前から気になっていたけど、こんな店だったんだ」と知っていただくことで、皆さんの「プチ贅沢」のお手伝いができればと思っています。

毎回、推薦者の方からお気に入りの一軒を皆さんにご紹介いただくとともに、次の推薦者も紹介していただき、またお気に入りの一軒をご紹介いただくという、リレー形式での長崎密着グルメ情報を発信していきます。

第一、第三月曜日は推薦編を、第二、第四月曜日は推薦された店舗編をそれぞれ配信する予定です。

次回は第5回店舗編「ピアチェーボレ」です。どうぞ、お楽しみに。

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