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長崎在住の女性が短編小説「アイアンロード」刊行-激痛を伴う病がきっかけに

春咲花町くるみさん

春咲花町くるみさん

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 長崎在住の女性・春咲花町(さくらまち)くるみさんが11月1日、短編小説「アイアンロード~二人三脚にありがとうを~」を刊行した。

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 春咲花町さんは東京都出身。成蹊大学(東京都武蔵野市)経済学部卒業後、大手企業で営業職に就いたが入社1年目に母親を亡くし、あまりのショックから立ち直れず3カ月間会社を休んだ。人事部からは強く退職を勧告されたが、春咲花町さんの仕事ぶりを高く評価していた当時の上司が救済。いったんアルバイトから入り直し短期間で社員に復帰後、家庭の事情で惜しまれながらも退職するまで通算8年間勤めた。

 2011年に起こった東日本大震災からしばらくたったある日、春咲花町さんの体を異変が襲った。体をナイフで突き刺すような激痛が全身に走り、普通に歩くことさえままならなくなった。原因はまったく分からず、病院での精密検査でもどこにも異常が見られなかった。その後、「線維筋痛症」と判明。女性患者の割合が圧倒的に多く、全国の推定患者数はおよそ200万人とも言われる原因不明の病気だった。終わりのない激痛に耐えられず自殺する人も少なくないという。

 今年3月、春咲花町さんはステンドグラスを本格的に学ぶため長崎に移住した。「病気が原因で普通の就職は困難になってしまったので、以前から興味があったステンドグラスを始めることにした。それで十分な収入が得られるわけではないが、逆に失うものもない。極めるなら本場長崎へという自然の流れに従っただけ」とほほ笑む。

 治療法が確立されていない病気に対応できる医療機関が著しく少ないのは長崎でも同じ。春咲花町さんは根気強く探し回り、ようやく「一緒に治療法を探してみよう」という医師に出会い、治療の効果で痛みが以前より緩和されたという。それでも気圧の変化が激しい日など、何日も寝込んでしまうことも。

 「アイアンロード」は、強く生き抜く「彼女」が主人公の短編小説。アイアンは鉄を意味し、ロードは道ではなく「人生」の意味も持つ「Lord」を当てる。きっかけは、「自分の中にある強い思いを、何かに表現していこう」とブログを始めたこと。あふれてくる物語をブログに書き続けていたある日、出版社から「短編小説にして出版しませんか」と声がかかった。

 春咲花町さんは、「突然病気に襲われた後、『なぜ私だけ?』『誰かに何か悪いことした?』と何度も何度も自問自答した。答えが見つからないまま失望する毎日が続いた。何度も死のうと思った。でも、もし病気にならなかったら小説を書くことも、ステンドグラスを始めることも、長崎に移住することも絶対になかった。感謝まではできないが、ありがたいと思っている」と振り返る。

 ペンネームの「春咲花町くるみ」は、全国に数軒しかないという名字の本名を少しもじって名付けたという。「学生のころ、修学旅行で長崎を訪れて桜町という地名があることを知り、とても身近な街だと感じた。すでに縁があったのかもしれない」とも。

 SNSなどのインターネットを中心に刊行を告知していた春咲花町さん。ネット仲間が情報を拡散してくれたことも手伝い、アマゾンの在庫分は短期間で売り切れた。「本当にありがたい。本のレビューは賛否両論。すごく褒めていただいたものも酷評もある。どちらも素直に参考にさせてもらい、もっと楽しんでもらえるように書く力を付けていきたい」と意気込む。

 四六判、91ページ。価格は864円。

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