長崎歴史文化博物館(長崎市立山1)に隣接する県立長崎図書館(同)で現在、企画展「チョーク絵って?」が開かれている。
現在、県立佐世保西高校で教諭として勤務する小野大輔さんは2010年9月、大学院を終了すると産休代替の美術教諭として西海市立崎戸中学校で常勤講師を務めることになった。
自身が初めて卒業生を送り出すまでのわずか半年間、全校生徒30人という極めて小さな同校で、卒業生たちとの間に教師と生徒の枠を超えた深い信頼関係を築くことができた小野さん。学校行事や地域連携行事はもちろんのこと、生徒たちから支えられ励まされる場面も何度もあったという。
卒業式前夜、「卒業おめでとう」という言葉だけでは今の気持ちを全て伝えきれないと感じた小野さんは、「何か形として表現したい」と考えながら黒板に何気なく卒業生たちの似顔絵を描いているうち、「これなら明日までに卒業生13人の顔を全て描けるのではないか」と必死でチョークを走らせ続けた。描かれた生徒たちの表情は、これまで小野さんが関わってきた中で最も印象に残った表情を一人一人思い浮かべて描いたという。「チョーク絵」はこうして誕生した。
「チョーク絵は紙に描く絵とは異なり、暗い色の下地に白いチョークで描くため、明度の把握に慣れないように思われがち。しかし実際には一度白く塗った後に消しゴムで消していく。この作業を黒で描いている感覚に置き換えると普段のデッサンと要領は同じ」と小野さんは説明する。チョークと消しゴムだけを使用し、指や手のひらでこすってグレーのグラデーションも表現できる。
会場には小野さんが日展特選を受賞した油絵やチョーク絵、県立佐世保西高校の美術授業で生徒たちが描いた作品などが展示されている。「チョークは身近にある材料なので、いろんな方に挑戦してもらいたい。表現する楽しみを体験してもらえれば」とも。
入場無料。来年1月18日まで。