旧香港上海銀行長崎支店記念館(長崎市松が枝町)で7月30日、世界を旅するマルチアーティスト・杉山明さんの音楽イベント「たましいのアキラライブ」が開催される。
杉山さんは1959年、日光市生まれ。23歳の時に渡米し、ニューヨークのギャラリーで個展やグループ展を開く。ヒッチハイクで全米を横断するが、途中で金のためにコカインの売人になり、一時はヘロイン中毒に陥ったこともある。4年間の不法滞在でどん底の生活を体験した杉山さんは27歳の時、美術教育の名門・ニューヨークアカデミーに欠員が出たことを知り、ゼロからアートを学び直すために受験を決意する。
半年間家賃を払っていない借家から大家に見つからないよう、300枚以上ある自分の作品から3枚だけ油絵を持ち出し、100枚ほどの作品のスライドとともに提出。2週間後、完全に諦めていたところに電話で合格を知らされた杉山さん。合格の決め手は、アメリカのポップアートの第一人者・アンディー・ウォーホルが「面白そうだから入れてやれ」と言ったからと後日知った。入学後、アナトミー(解剖学)クラスでは、ホルマリン臭が漂う病院の一室で、皮膚を剥がされた本物の死体の筋肉を、実際にゴム手袋で触りながらデッサンをさせられた。女子生徒2人が部屋を飛び出し、トイレで嘔吐したという。
その後、世界100カ国以上を旅し、画家・彫刻家・書道家・写真家・小説家・詩人・ミュージシャンなどマルチアーティストとして活躍する。小説家としての処女作である自伝小説「COTTON100%」(幻冬舎刊)は2009年1月、NHKの番組「私の1冊 日本の100冊」で紹介された。杉山さんは同書で、「君も俺も確実に死ぬ。人間の死亡率は100%。だったら今、この瞬間に生きろ」と訴え、多くの自殺志願者が思い留まったという。ほかに「アジアに落ちる」「ケチャップ」、田口ランディさんとの共著「オラ!メヒコ」などの著書がある。
2011年、ブラジルで東日本大震災の発生を知り、帰国後すぐ福島へ向かった杉山さんは、通常のライブでも年間150本ほどをこなすが、少しでも休みがあると慰問ライブのため東北を訪れたという。無理がたたり、ライブ後に救急車で運ばれて胃がんの末期宣告を受けたことも。同ライブでは杉山さんのソウルメイトでもある、倍音楽器奏者・シマカワコウヂさんも共演する。
主催するかのこゆりさんは、「初めて音楽を聞いた時、衝撃だった。杉山さんの音楽は、老若男女や障がいの有無などの垣根に関係なく楽しめる。ユーチューブでも聞けるが、ライブの迫力は全く別物。シマカワさんとのジョイント演奏も楽しみ。少しでも興味ある人は、ぜひ聞いてほしい」と呼び掛ける。
開場18時。開演18時30分。チケットは3,000円(当日=3,500円)。問い合わせはTeRAYA(大浦町、TEL 095-895-8342)まで。