五島市出身のシンガー・ソングライターで長崎市在住の龍崎鬼一朗さん(33)が7月22日、「福岡ヤフオクドーム」(福岡市中央区)で対埼玉西武戦の試合前に行われる「国歌独唱」を務める。
龍崎さんは五島列島の福江島出身。県立五島高校を卒業後、佐世保市内の大学に進学した。アマチュア時代からさまざまな音楽コンテストなどに出場。優勝や準優勝など好成績を収め、2007年にプロデビューした。2008年と2010年、着うたサイトのコンテスト「itadakiグランプリ」で全国1位を2回獲得。2009年2月には五島市ふるさと大使に就任し、作詞を手掛けたオリジナル曲「同じ空の下で」で韓国でもデビューを果たす。
2011年3月に閉校になった県立富江高校に閉校記念歌「くろしおの風」を作詞・作曲して提供。「終わりじゃない。今日からが始まりさ」。歌詞は校舎跡地に歌碑として刻まれている。今年11月には「同じ空の下で」の歌詞がモチーフとなる日韓合作映画(ベク・ジェホ監督)が韓国国内で公開される予定(日本は来年度公開予定)。現在、長崎市を拠点に全国各地で音楽活動を展開する。
14日14時から県庁記者室で会見した龍崎さんは「五島出身の私が大きな舞台で国歌独唱など夢のよう。精いっぱい務めさせていただきたい」と力を込めた。きっかけは福岡在住の友人から飲食店の経営者を紹介され、その経営者にオリジナル曲「枯れない花」「人生列車」を披露したこと。「感動した。ぜひ応援したい」と言われ、東福岡高校時代の同級生を中心に龍崎さんを紹介する輪が広がったという。その輪から福岡ソフトバンクホークスの球団関係者につながり「歌声に昭和の匂いと力強さを感じる。熊本の震災復興のメッセージにもなるのでは」と国歌独唱のオファーが結実した。
龍崎さんは佐世保市に住んでいたころ、福岡ダイエーホークス時代の城島健司選手の家族とも親交があり、「今回のオファーも偶然とは思えない」と振り返る。「もともと『喜一郎』という名前でデビューしたが、紆余(うよ)曲折して何度も挫折しかけた。2012年2月、どん底状態の上に父まで亡くした時期だが『死んだ気持ちで』再起するため改名した」と龍崎さん。
「龍は五島列島の形。ドラゴンアイランドを意味し、長崎とつなぎたいという思いを込めて龍崎とした。鬼は標高315メートルの五島市のシンボル『鬼岳(おんたけ)』やバラモンの鬼退治伝説をイメージ。平戸の民芸品『鬼洋蝶(おにようちょう)』など五島周辺は鬼との縁が深い。最後の文字を郎から朗に変えたのは、『龍の頭が月の尾を追いかける』という意味で龍踊り(じゃおどり)の形になっている」と説明。「字だけ見ると恐ろしく感じるが、五島の鬼はとてもやさしい」とも。
6月29日から長崎市民エフエム放送で「龍崎鬼一朗のラブレターラジオ」がスタートした龍崎さんは「たまたまライブに来られた会社経営者の方から『頑張れ』と、初対面にもかかわらず冠番組をいただいた。これまでの数え切れない縁に応えるためにも、大変おこがましいことだが『どんな人にも報われる時がいつか必ずやって来る』という証明として国歌独唱を聞いてもらい、何か感じてもらえれば」とほほ笑む。
龍崎さんの国歌独唱は、18日の対オリックス戦を皮切りに6試合行われる「鷹の祭典」の一環。18日は「ピトレ弦楽奏団」が国歌を演奏。19日はお笑いコンビ「どぶろっく」が試合前に登場する。20日は芋洗坂係長がダンスを披露。龍崎さんが国歌独唱する22日は、お笑いコンビ「テツandトモ」も出演する。23日はお笑いトリオ「ロバート」の秋山竜次さんが登場。最終日の24日はタレントの西内まりやさんが応援ソング「輝け!」を歌う。龍崎さんの国歌独唱は17時40分ごろから。