長崎県内のスタートアップ支援を目指す「ミライ企業Nagasaki推進事業」のイベントが2月23日、長崎県庁で行われた。
チャレンジ部門最優秀賞に輝いたwavelogyの道上竣介さん
十八親和銀行(長崎市銅座町)と長崎県が昨年から取り組む同イベント。同行の山川信彦頭取が大石賢吾長崎県知事と就任した時期が近く、「一緒に新たなビジネス創出支援を目指した取り組みをしたい」と声をかけて始まったもの。
当日はこれからスタートアップの企業を目指す人や起業したばかりの人を対象にビジネスアイデア構築支援を目指すチャレンジ部門と既存スタートアップ企業の資金調達を目指すスタートアップ部門に分かれてピッチ大会と基調講演が行われた。
チャレンジ部門には一般公募から選考した3組と5つのビジネスプランコンテストから推薦を受けた5組の合計8組が出場。ピッチと質疑応答の合計10分でアイデアを競った。
最優秀賞は、老朽化した水道管からの漏水音をAIで診断検査するシステムの開発に取り組むwavelogy(東京都文京区)の道上竣介さんに決まり、賞金300万円が贈られた。地下の水道管からの漏水音を聞き分けて漏水場所を特定する技術は水道整備士と呼ばれる専門家の技術に依存していることから、道上さんはAIによる音景解析技術を活用。佐世保高等専門学校(佐世保市)の生徒だった2022年に同社を設立していた。
優秀賞には、温泉の沈殿物「湯の花」で作る忌避剤「鳥獣コンコン」を使い農家のイノシシ被害防止を提案した島原翔南高校(南島原市)「湯の花チーム」が選ばれ、賞金100万円が贈られた。
投資家とのマッチングを目指すスタートアップ部門には一般公募から選考した5組が出場。ベンチャーキャピタル10社が参加して5分のプレゼンテーションと8分の質疑応答が行われ、ビジネスモデルをアピール。最後に、ビジネスモデルに興味を持った会社の社数を発表。漁業者支援を目指す水産DXサービスをプレゼンしたオーシャンソリューションズテクノロジー(佐世保市)や食品残渣を活用して飼育したミールワームを動物性プロテインとして水産飼料原料への活用を目指すBooon(油屋町)の取り組みが、それぞれ最多となる7社の関心を集めた。
基調講演には、昨年のピッチ大会にも出場し、介護従事者向け支援システム「iTherapy(アイセラピー)」の開発を行うLiaisonDesign社長の川副巧成さんが登壇し、事業展開などの経緯を説明。川副さんは1996(平成8)年から介護現場に携わってきた経験から2014(平成26)年、介護の次世代コミュニケーションツールの開発に着手。2021年5月に同社を設立した。
十八親和銀行の山川頭取は「チャレンジ部門は取り組みができていない場所でも広げ、長崎全域でやっていきたい。長崎県内のスタートアップのエコシステムが不完全ではあるが着実にできてきていると実感している。今後も起業家育成に向けて連携して取り組みを進めていきたい」と意気込みを見せる。