長崎大学でリレー講座-日本マクドナルド原田CEOが講演

講演会の様子

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 長崎大学(長崎市文教町)で11月16日、日本マクドナルドの原田泳幸CEOが「グローバル時代に求められるもの」と題して講演した。

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 同大では3年前から「リレー講座」を開いており、各界の著名人を講師に招いて学生とのディスカッションや一般講演会を行っている。今年は10月~12月にかけて全6回を行い、今回は4回目。第1回はアメリカ戦略国際問題研究所のマイケル・グリーンさん、続いて元プロ陸上選手の為末大さん、日本アイ・ビー・エム相談役の北城恪太郎さんがそれぞれ講演した。原田さんは講演に先立ち、数人の学生らと約1時間にわたって別室でディスカッション。講演会場となった中部講堂には教員、学生などの大学関係者のほか、一般からも多数の参加者が訪れた。

 原田さんは佐世保市出身。1972(昭和47)年に日本NCR入社。その後、横川ヒューレット・パッカード、シュルンベルジェ・グループに移り、1990年にアップルコンピュータ・ジャパン(当時)に入社。1997年には社長兼米アップルコンピュータ副社長に就任した後、2004年に日本マクドナルドCEOに就任。創業者である藤田さんが進めてきたバリュー戦略を次々に見直して、短期間でブランドイメージの建て直しに成功。当時のマスコミからは「マックからマックへ」と紹介された。2009年12月にはクオリティー・ライフスタイルマガジン「GQ JAPAN」で各ジャンルで活躍をした男性に贈られる「GQ Men of the Year 2009」を受賞した。

 講演の冒頭で自らのキャリアがエンジニアとしてのスタートだったことを紹介。ところが30代で突然、営業への転身を命じられた原田さんは、世界のグローバル企業で働きながら企業ごとに文化がまるで違うことを痛感したことなどを話しながら、いかに好調時に痛みを伴う改革を推進することが重要なのかを説明した。また、マクドナルドがグローバル企業であることを具体的な数値を示しながら説明した上で、「リーダーシップで求められるのは何をやってきたか」ということや「ビジネスとは矛盾を追及すること」などとスライドを使いながら分かりやすく解説した。人材への投資がいかに重要かも話しながら「日本でしか売れないものは絶対に利益が出ない」と断言。各国による食文化の違いを認識しながらグローバル戦略を展開する思考法「Think Global, Act Local」を紹介した。

 「キャリアは向こうからやってくる。目の前の仕事に全力を注いで、とことん考え、自ら改革せよ」と若者に向けてエールを送る原田さん。講演終了間近には危機管理にも触れ、「自分の評判を下げても守るべき価値もある」と自らの体験を交えながら話し、東日本大震災のような危機に接することで、むしろ社員の団結が強まり、本当の実力が見えたと振り返った。

 司会役の長崎大学産学官連携戦略副本部長の嶋野武志さんが「原田さんが言う『アップルらしさ』や『マクドナルドらしさ』はどうやって発見したらいいか?」と質問すると、「弱点の方が多く見えるが見てはいけない。強さを伸ばせ」と答えた上で「しかし日本人は特に強さを説明できないのが弱み」と話した。趣味でドラムの練習をしているという自身の例を紹介しながら「人間の習性で誰もがすぐ上達したがるが基礎力こそ大切」とも。

 講演終了後には来場者からの質問にも答え、「お金はツール、人間こそ財産」「今の苦労がやがて資産になる」「失敗を恐れることが最も危険」などとアドバイスした。講演前に原田さんとのディスカッションに臨んだ同大医学部保健学科の藤田桃子さんは「リーダーとして必要な要素を一つ挙げよというテーマだったが、原田さんが来るまでに私が力説していたことと近いことが原田さんの答えだったので、自信がない自分も少し自信が持てた。こんなすごい経営者に励まされたことは一生の財産になる」と振り返った。

 リレー講座は12月にあと2回予定されているが、どちらもすでに満席となっている。

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