昨年12月26日から始められた「長崎市新庁舎建設基本計画案に関するパブリックコメント」の募集が今月31日で締め切られる。
現在の市庁舎は1959(昭和34)年に本館、議会棟が完成してから50年以上が経過。老朽化に伴い業務のIT化やバリアフリーなど建設当初には考えられていなかった多くの課題が浮上し、2009年の耐震調査で強度不足も判明したことから、市議会特別委員会や「長崎市庁舎建て替えに関する市民懇話会」などの議論や意見を踏まえながら2011年に市庁舎の建て替えを、2013年に建て替え場所を決定。現在の公会堂(魚の町)を取り壊した上で公会堂前広場を含む跡地に移転することが現時点で決まっている。
長崎都市遺産研究会(入船町)によると、長崎市公会堂は長崎市出身の武基雄早稲田大学教授が原爆復興を祈願して設計した市民劇場。被爆直後の長崎が平和文化都市として復興することを願って全国から寄せられた浄財「原爆復興基金」が建設費に充てられた。この基金で建設された文化施設には「国際文化会館」「長崎水族館」などがあったが、これらはすでに失われているため公会堂が現存する唯一の建造物となる。前面広場は伝統芸能「長崎くんち」の「お旅所」として長年市民に親しまれてきた。
1993年制定の行政手続法で制度化された意見公募手続き(パブリックコメント)。同法第39条(意見公募手続き)では、命令などを制定するときは事前に公示した上で期間を定めて広く一般に意見を求めなければならないと規定。市は作成した基本計画案を公表し、同法に基づいて昨年末から広く市民の意見を募集してきた。
長崎市在住の行政書士・橋本剛さんは「基本計画案がパブリックコメントの対象になっていることを全く知らなかった。そのまま期限が来れば反対意見は特になかったことにされてしまう」と危機感を募らせる。「自分の個人的意見ではリノベーション(大規模リフォーム)を施して再生。できなければ市役所と合築して外観だけは何とか保存したい。でも人それぞれに考え方があるはず。市民が知らないうちに黙認したことになってしまうのは選挙の棄権と同じで一番良くないこと。まだ数日あるので、一人でも多くの人が自分の意見をしっかり伝えてくれれば」とも。
パブリックコメントの応募用紙は市役所のホームページからダウンロードできるほか、市役所本館、行政センター、支所などで入手できる。