カメラのフォーカス(長崎市万屋町、TEL 095-825-5200)で現在、写真家・伊東俊介さんによる出張撮影サービス「いとう写真館」が行われている。
伊東さんは1971(昭和46)年、大阪府生まれ。「Re:S(りす)」「カメラ日和」「天然生活」などの雑誌をはじめ、さまざまな媒体で活躍中の写真家。10年ほど前のある日、伊東さんは「写真館で写真を撮ることは重要な意味がある」と突然、気づいたという。個人的な活動として知人や友人の出張撮影を始め、8年前から「いとう写真館」という現在のスタイルを確立した。
同店で「いとう写真館」が開かれるのは5回目。毎年、長崎くんちの時期に開催している。伊東さんが中判フィルムカメラを使って撮影し、手焼きで仕上げられたモノクロ写真が後日届けられる。
「いとう写真館は長崎を抜きにしては語れない」と振り返る伊東さん。「この活動を通じて感じることは、九州は家族写真が好きな人が圧倒的に多いということ。特に長崎は毎年恒例行事のように撮影する人が一番多い。いつも『やはり、自分がやっていることは間違っていない』と勇気をもらう」とも。家族がそろって記念写真を撮ることを「新しい習慣」として根付かせたいという。
「毎年、同じ家族を撮影していると、子どもたちに毎年同じ話をするから成長するにつれて多少いやがられているかもしれない。それがいい距離感を保って『遠い親戚のおっちゃん』のような関係になれれば」とほほ笑む。モノクロフィルムでの撮影にこだわるのは「ネガと印画紙が手元に残るから」だという。
「デジタルは確かに便利だが一瞬にして消えてなくなる危険がある。見るためには機械が必要なので見返しにくい。印画紙にプリントしたものはいやでも目に入るし、ネガさえあれば後からいくらでも焼き増しできる。家族が輝いている瞬間という宝物を残すには、銀塩が最も適している」と力を込める。
長崎市内に住む若杉猛さん一家は「いとう写真館」の常連。今年は9歳、7歳と生後8カ月の子どもたちが夫婦と一緒のフレームに納まる。若杉さんは「毎回、家族の記録として撮影してもらっている。今年で4回目。昨年まで4人家族だったのが1人増えた。年賀状としても印刷して配るので、子どもたちの成長記録が周囲の記憶にも残る。これからの家族の成長も楽しみ」と笑顔を見せた。
伊東さんは「カメラ目線で撮影した写真は未来の自分へのメッセージ。写真の中の自分と、それを見つめる未来の自分の視線が重なる。5年後、10年後と時間が経過しても、撮影した時の記憶が鮮やかに蘇るようにとの思いでシャッターを切る」と説明する。
料金は「台紙仕上げ」=1万5,120円~、「木製パネル仕上げ」=1万7,280円~、「アルバム仕上げ」=1万9,440円~、「額装仕上げ」=2万7,000円~(以上、送料込み)。印画紙への焼き付け作業は「モノクロ銀塩ラボ・STUDIO 5」(勢井正一代表、大阪市西区)で、一枚一枚手作業で行われる。
開催時間は11時~19時(最終受け付けは18時30分)。予約優先だが当日でも受け付ける。10月9日まで。