県立長崎図書館・2階講堂(長崎市立山1)で11月8日、体験ノンフィクション漫談家・「コラアゲンはいごうまん」さんのライブが開かれた。長崎公演は今回で5回目。
コラアゲンさんは1988(昭和63)年、吉本興業が運営する吉本総合芸能学院(NSC)に7期生として入学してから今日まで芸歴27年に及ぶベテランお笑い芸人。当時の元相方は、雨上がり決死隊の蛍原徹さん。その翌年、オール巨人さんに弟子入り。関西の寄席やテレビ、ラジオなどで活躍した。
1999年、フリーとなって上京。東京でさまざまなお笑いライブなどに出演していたが、2001年に「WAHAHA本舗」の社長であり演出家の喰始(たべはじめ)さんと出会う。その後、喰さんから出されるテーマを実体験し、そこで実際に遭遇したドラマを笑いのネタにする「体験ノンフィクション漫談」という芸風を確立した。通常は潜入できない団体への潜入や、危機一髪の実体験、刑務所慰問の体験などをネタにして臨場感あふれる過激な表現で話を盛り上げる。テレビなどの既存メディアでは放送禁止の内容に当たるネタが多く、放送するにはネタの時間が長いことからライブでしか聞けない。今回の長崎公演には40人ほどが参加した。
全国一人旅ツアー「僕の細道」は今年で7年目。長崎公演と同様に少人数ながらツアーを支える熱烈なファンが全国各地に存在する。公演開催地の地元ネタも披露するため、前日などに現地でのネタ探しを行い、短時間でネタを仕上げて披露している。初めての長崎公演の時にコラアゲンさんが地元ネタ調査のために訪れた老舗和菓子店の社長は、ネタに使われて以来毎回欠かさずライブに訪れているという。
熊本から訪れた山口優助さん(28)は、「今朝9時ごろ車で熊本を出た。去年知った時は熊本公演が終わった後で、今年の熊本公演は都合が合わなかった。以前、テレビ番組で知ってDVDを借りた。自分が知らないことを実際に調べに行くというスタンスが面白い。今日は楽しみたい」と笑顔を見せる。開演時間が近づくとコラアゲンさんが登場。「一人なので自分でやります」と本人が前説を始めた。
「公演中は携帯の電源は切ったりマナーモードにしたりせず、入れたままにしておいてください」。この言葉に初参加の人たちは驚きを隠せない。「携帯が鳴ったら普通に出てもらって構いませんので必ず僕と代わってください。今日は人数が少ないので電話したお友達に動員をかけます」と、電話を代わった場合のシミュレーションを披露しながら、長崎の地元事情を踏まえて会場の場所を説明する場面で「まじで?」「そっち?」と演技するコラアゲンさんに会場は大爆笑。ライブ中には観客の携帯電話が実際に鳴り、観客が「もしもし」と普通に電話に出たので会場はさらに笑いに包まれた。
公演前半はコラアゲンさんが長崎で調べたネタを披露。「長崎で超有名なコマーシャルが言っていることは本当か?」というネタでは、実際にその現場に行った証拠写真を示して臨場感豊かに店内でのやり取りを再現。「このコマーシャル知っている人」と会場に尋ねると、熊本から来た山口さん以外は全員が挙手。山口さんに対しては解説を加えながらコラアゲンさんが体当たりで調べてきた答えを披露すると、「へえ~。知らなかった」という声が会場のあちらこちらから聞こえた。
続いての地元ネタ「必殺カット江口の必殺は一体何が必殺なのか?」に観客らは大きく身を乗り出した。「必殺カット江口」(長崎市浜口町)は強烈なインパクトが漂う看板が有名な老舗理髪店。看板の強烈さから客ではなくても店の存在自体を知る人は多い。臨場感豊かに店のドアを開け、内部の様子や店長との会話を面白おかしく話すコラアゲンさん。「必殺は本当でした」というオチでは、腹を抱えて笑う人が続出した。
10分間の休憩を挟んだ後半では新ネタを披露。喰社長から「そろそろ自分で体験するネタを考えろ」と言われ、悩んだ挙げ句に日本に数社しかないというある仕事をしている会社を訪れて体験することを決意。そこでの生々しい体験談に参加者は抱腹絶倒。きっかけとなった、あるニュースの登場人物のものまねを披露すると、あまりの酷似ぶりに笑いながら目頭をハンカチで拭く人も。前列で聞いていた男性は「これはちょっと反則技だ」と笑い転げた。約2時間半のライブが終わると、観客らは名残惜しそうにコラアゲンさんとあいさつを交わしたり、握手をしたりしていた。
コラアゲンさんは2012年、「実録・体験ノンフィクション漫談」という2巻組のDVDを発売。昨年の長崎公演の際、本人が「TSUTAYA遊ing 浜町店」(浜町)を訪れ、「本人です」と担当者らにあいさつ。レンタルDVDの表に「コラアゲン本人です。お願いです!見てください」とコメントを添えた。レンタル店では回転率の悪い商品は在庫から外すよう本部から指示を受ける。全国の店にはすでに在庫はないが、同店だけは全国で唯一レンタルを継続。担当者の徳永龍太郎さんは、「ほかの作品では西の果ての店にご本人がこうして来られることはまずない。店として本当にありがたい。回転率では確かに回収すべきだが、店長とも相談してレンタルを続けることにした」と話す。
初めてライブを見た梅崎香織さんは、「心温まるライブだった。大阪からいらしたコラアゲンさんに長崎の商人の素晴らしさを教えていただき、長崎愛が深まった。ご本人には申し訳ないが『土下座』の話が特に面白かった。笑いと涙、仕事に役立つスキル、人情味、人生訓。こんなに盛りだくさんのライブを観賞できたことに感謝している。誰もが一見の価値があると思う」と振り返った。