長崎のデザイン事務所、総合芸術誌「FLAG」第2巻刊行-長崎から世界へ

FLAGを手にする松本社長

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 長崎のデザイン事務所「HOP」(長崎市銀屋町、TEL 095-820-9355)が2月、総合芸術誌「FLAG」第2巻を刊行した。

ガラパゴスな「食器」と「のし袋」

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 2013年8月に創刊した同誌。アートディレクターでデザイナーでもある松本信幸社長は「創刊号から1年半かかったが、ようやく出すことができた。不定期ながらこの雑誌を出し続けることで、次世代の人たちに、形にならない何かを残したい」と話す。

 20センチ四方サイズ。前回より18ページ増やし64ページで構成した。表紙を飾る外国人女性は、長崎市内の学校に勤務するALT(外国語指導助手)教員にモデルを依頼。「尾曲がり猫」の街でもある長崎を象徴して、口元にはうっすらと白いひげが生えている。

 「芸術誌としてのクオリティーを壊さないため、どこにもこびないために広告は3社だけにお願いした。正直、ビジネスとしては全く合わないが、紙の重さ、匂い、紙をめくる楽しさは紙でしか味わえない。当然、紙質にもこだわった。インターネットでさまざまな情報が混在する現代だからこそ、ここにはこだわらなければいけないと思っている」と力を込める。

 1963(昭和38)年、長崎で生まれた松本さんは、子どものころから絵やデザインのような「企画物」に興味があった。「例えば湯飲みの形を考えたり、イラストを書いたりするのが好きだった。商品のデザインを見て、そのころから『ちょっと違うんだよな』と感じていた」という松本さんは、長崎日大高校でデザインを学び、そのままデザインの世界に足を踏み入れた。「もちろん苦しいことも多いが、楽しいことの方が上回る。自分にとっては多分、天職だと思う」とも。

 特集テーマは「写真植字機発明90周年」。アートディレクターの寄藤文平さんと写植家の伊藤義博さんの対談と写植の世界を象徴する写真などを中心とした特集記事に20ページを割く。松本さんは「本来、印刷は活版の世界だったが日本で写植が発明されて90年になる。ラインがストップしてしまったため写植の歴史は終わってしまった。私たちは写植の考え方を持っているので、写植でできる微調整をデジタルでも応用する。私たちには当たり前だが、まさにガラパゴスの技術。ガラケーと同じように独自進化したが、本家が使えなくなったから葬り去っていいとは思わない。若い人に写植特有の匂いが少しでも伝われば」と話す。

 そのほか、佐世保市出身のキャラクターデザイナー・久保誠二郎さんや、ミラノで活躍する長崎市出身のファッションパタンナー・船橋芳信さん。世界的に活躍する長崎出身のヘアメークアーティスト・Noriさんなど長崎に縁のあるクリエーターを取り上げる。

 「全体を貫くテーマはガラパゴス。前回同様、世界に発信するため全文が日本語と英語の対訳になっている。写真一枚一枚にもこだわった。見る人がそれぞれ感じてほしいから、あえて写真の説明を詳細に書いていないページもある。手に取った人が何かを感じてもらえたらうれしい」とほほ笑む。

 価格は648円。発行部数は1000部。好文堂書店、石丸文行堂(以上、浜町)、メトロ書店(尾上町)、長崎県美術館(出島町)などで販売するほか、リブロ福岡天神、ブックスキューブリック(以上、福岡市)、長崎書店(熊本市)、パルコブックセンター渋谷店(東京都渋谷区)などで取り扱う。

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