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長崎県美術館「ガウディと井上雄彦さんの特別展」が入場者2万人突破

記念品を受け取る金子雄祐さん(左)と岸田真奈さん(中央)

記念品を受け取る金子雄祐さん(左)と岸田真奈さん(中央)

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 長崎県美術館(長崎市出島町)で2月20日、開催中の特別展「ガウディ×井上雄彦 シンクロする創造の源泉」入場者2万人を祝うセレモニーが行われた。

入場口に向かう金子さん(右)と岸田さん

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 スペインの未完成建築物「サグラダ・ファミリア聖堂」などの建築家として知られるアントニ・ガウディと、国内発行部数1億部を突破してバスケットブームのきっかけを作った漫画「SLAM DUNK」や「リアル」「バガボンド」など、人気漫画の作家として知られる井上雄彦さんが時代や国境、ジャンルを超えてコラボレーションする特別展。「2013-2014 日本スペイン交流400周年」の記念事業として企画された。昨年7月に東京から始まり、10月から金沢21世紀美術館(金沢市)で1カ月間開催された。長崎では昨年12月20日から開かれている。

 1852年、スペインのカタルーニャで父方、母方ともに銅細工師の家系という家に生まれたアントニ・ガウディは、幼いころから空間を把握する能力に長けていたという。1873年から1877年にかけてバルセロナの学校で建築学を修得。19世紀から20世紀にかけてバルセロナを中心に活躍し、「グエル公園」「カサ・ミラ」など7点から構成される作品群は世界遺産に登録されている。

 1883年、サグラダ・ファミリア聖堂の2代目主任建築家に就任。1914年以降、相次ぐ不幸による仕事の停滞やバルセロナ市の財政危機で聖堂の建設は進まず、追い討ちをかけるように建設資金を支援していたパトロンも死亡するという災難に見舞われる。しかし敬虔なカトリック教徒だった建築家は最後までサグラダ・ファミリアの建設に全精力を注ぐ。終生独身だったガウティは1926年6月7日、ミサに向かう途中で路面電車に轢かれ、3日後に73歳で息を引き取った。身体が不自由になったため建設中の聖堂に住み込んでいたガウディは事故の際、身なりに気を使わなかったため浮浪者と間違われて手当てが遅れたと伝えられる。サグラダ・ファミリアはガウディ没後100年に当たる2026年に完成する予定。

 井上雄彦さんは1967(昭和42)年、鹿児島県生まれ。1990年に漫画「SLAM DUNK」の連載がバスケットブームに火をつけ、国内発行部数1億部を突破した。続いて宮本武蔵を描いた「バガボンド」(1998年~)、車椅子バスケットボールがテーマの「リアル」(1999年~)などを連載。「バガボンド」で文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞するなど多数の受賞歴を持つ。近年は個展を開いたり、京都・東本願寺で親鸞の屏風絵を描いたりするなど、漫画家の枠を超えて活動。海外における人気も高く、2013年12月に「日本スペイン交流400周年」事業の親善大使に任命されている。

 同展ではガウディ自筆のスケッチ、図面、大型建築模型やデザインした家具など、およそ100点をスペインの専門機関が出品しているほか、バルセロナで撮影した映像やプロジェクション・マッピングによる演出、建築構造のインタレーションなどにより、展示空間をより魅力的に構成する。インタレーションとは、特定の室内や屋外などにオブジェや投影装置などを設置して作者の意図に従って展示場所全体を「体験空間」として演出する芸術手法のこと。1970年代以降に一般化した。

 井上さんの作品およそ40点は、全て同展のために描き下ろしたもの。壁面に井上さんが筆や鉛筆で直接描いた作品もある。1カ月間にわたって実際にバルセロナで暮らし、ガウディの建築作品カサ・ミラにアトリエを構えて創作に臨んだ。プロジェクトの初期段階から職人と協働して作品を生み出すガウディの手法に従い、自分で描く和紙作りから手掛けた。井上さんがガウディの世界観を描く「平成長尺大紙」(約3.3メートル×10.7メートル)は、1500年の歴史を持つ越前和紙の現役職人とともに手漉(す)きしたもの。

 井上さんとガウディは以前から不思議な縁があり、2011年に井上さんが取材旅行でバルセロナを訪れた時にさかのぼる。サグラダ・ファミリアの建設に関わる彫刻家のブルーノ・ガジャルさんとの対談の合間、ガジャルさんから「建設中の聖堂正面のファザード門に飾る聖書の一節が各国語に翻訳されているが、日本語訳がまだない。ぜひ書いてほしい」と依頼を受ける。同ファザード門の完成まで実物を見ることはできないが、井上さんが書いた日本語訳「我らを悪より救い給え」の画像が最後のエリアに展示されている。

 入場者2万人目は長崎大学医学部1年の金子雄祐さん(21)と立命館大学(京都市)国際関係学部3年の岸田真奈さん(21)。大阪出身の金子さんと京都に住む岸田さんは、高校生のころ通っていた塾の同級生だという。2人は画集などの記念品を受け取り、報道陣の質問に答えた。

 少し緊張した様子の金子さんと岸田さん。記者から2万人目になった感想を聞かれた金子さんは「まさかこんなことが待ち受けているとは思わないので面食らった。大学で特別展のポスターを見て興味を持った。もともとスラムダンク世代なので井上先生の画集を読んで気に入っていた。ウミガメの絵が好きなので、中で見ることができれば」と落ち着いて答えた。春休みを利用して長崎に遊びに来たという岸田さんは「私もスラムダンクの大ファン。何も知らずにたまたま遊びに来たが、長崎ランタンフェスタや特別展が見られてとてもうれしい」と笑顔を見せた。

 開館時間は10時~20時。入場料は1,300円(高校・大学・70歳以上=1,000円、小中学生=700円)。第2・4月曜休館。3月8日まで。終了後は兵庫県立美術館(神戸市。3月21日~)、仙台メディアパーク(仙台市。6月3日~)で開催を予定する。

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