
半導体人材育成の中核拠点として始動 佐世保高専「S-PORT」開所式・記念シンポジウム
独立行政法人国立高等専門学校機構(東京都八王子市、理事長:中島 英治、以下「高専機構」)、佐世保工業高等専門学校(長崎県佐世保市、校長:下田 貞幸、以下「佐世保高専」)は、令和8年3月17日(火)、アルカスSASEBOにて「佐世保工業高等専門学校半導体人材育成センター(S-PORT)」の開所式および記念シンポジウムを開催しました。
民間企業(半導体関連企業45社、金融機関4社)、文部科学省、経済産業省、自治体、及び教育機関から産官学約200名が長崎県佐世保市に集い、日本の半導体産業を支える「即戦力人財」育成に向けた熱気あふれる議論を展開。全国51校の国立高専ネットワークの"司令塔"として、S-PORTが本格始動しました。

パネルディスカッションの様子

九州大学名誉教授 安浦寛人氏
■なぜ今、「S-PORT」なのか?-半導体人材不足という課題と高専の答え
世界的な半導体の供給不安が続く中、日本においても半導体分野の高度人材不足が喫緊の課題として浮上しています。そこで求められているのは、
製造技術を理解するだけではなく、統合的視点を兼ね備えた人材です。こうした社会的要請に応えるために誕生したのがS-PORTです。
S-PORTは、Semiconductor education Platform for Orchestrating Resources & Talents の略称であり、
「人・もの・才能・知恵」を協奏的に束ねる教育プラットフォームを意味します。
S-PORTは、令和4年度より佐世保高専が熊本高専等と連携して進めてきた「COMPASS 5.0」事業の成果と知見を継承・発展させ、高専機構の半導体人財育成の中核拠点として正式に設立されました。
■文部科学省 松本氏「本センターは国の半導体人材育成の重要な鍵となる」
開所式では、産官学のキーパーソンが登壇し、S-PORTへの期待を語りました。
・佐世保高専校長 下田 貞幸
「世界へ羽ばたく半導体人材をここから」
COMPASS 5.0事業での成果を基盤として、本センターを開所しました。産学官が連携し、開かれた教育のエコシステムを構築し、現場の要請を取り入れながら、サプライチェーンを俯瞰できる実践的技術者を育成します。人材は地域の宝、教育は社会の希望であります。 佐世保から九州、そして世界へ、地域をつなぎ、未来をつくる"ポート(港)"となることを目指します。

佐世保高専 下田校長
・文部科学省高等教育局専門教育課課長 松本 英登 氏
「本センターは国の半導体人材育成において重要な鍵となる」
佐世保高専は60年以上にわたり、地域と我が国の産業を支える人材を育成してきました。令和7年度からは大学高専機能強化支援事業により情報化教育を強化し、COMPASS5.0事業と合わせて高度情報人材育成をさらに加速化します。また、本センターは全国51高専の半導体教育をけん引し、高専と産業界の融合を促進する半導体教育のネットワークのハブとして、多くのイノベーションの拠点としての機能を期待します。

文部科学省 松本氏
・経済産業省九州経済産業局地域経済部 部長 楠木 真次 氏
「九州から全国へ。高専が拓く半導体人材育成」
九州は、日本の半導体産業を支えている地域であり、TSMC進出を機に2022年に「九州半導体人材育成等コンソーシアム」を設立し、人材確保と地域の魅力発信に取り組んできました。半導体製造だけでなく、素材・装置企業も多く集積する九州において、半導体の社会実装を担う中核人材を数多く輩出される佐世保高専の教育モデルが九州ひいては日本全国に広がっていくことを強く期待しております。

経済産業省 楠木氏
・長崎県 県北振興局長 大瀬良 潤 氏
「長崎の半導体産業を支える産学官連携のハブが始動」
長崎県半導体産業は、製造品出荷額の約2割(約3,500億円)を占める基幹産業へ成長し、産業の拡大に向け企業誘致やサプライチェーンの整備が進む中、持続的に高度技術者の育成が急務となってきています。そのような中で、本センターでは、産業界のニーズを教育と研究に迅速に反映し、産学官を束ねるハブとしての役割を期待します。

長崎県 大瀬良氏
・佐世保市長 宮島 大典 氏
「若者の挑戦を後押しする半導体人材育成の新拠点の誕生」
現代社会の基盤である半導体分野では、人材不足が深刻化し、その育成は喫緊の課題となっています。今回のセンターの設立により、基礎から応用まで「つくる」「つかう」「つなぐ」力を身につける環境が整い、学生の価値創造と地域産業への波及効果が期待されます。また、教育と産業の連携をさらに強め、若者が夢を持って挑戦できる環境づくりの後押しをしたいと思います。

佐世保市 宮島市長
■S-PORTが描く人財モデル「不可欠な人財は“つくる”“つかう”“つなぐ”」
S-PORTセンター長・猪原武士氏は、Society 5.0時代に求められる人材の核心を3つの言葉で示しました。

「製造の担い手だけでなく、社会全体の文脈で半導体の価値を最大化できる人財こそが、これからの日本に必要です。」(猪原 武士 S-PORTセンター長)

猪原センター長
■“佐世保高専「ミニマルファブ」がもたらす仕組み”
佐世保高専がS-PORTを設立することになった重要ポイントは、佐世保高専が有する「ミニマルファブ」です。大規模工場設備を必要とせず、学生が自ら発想・設計したデバイスを学内で迅速に試作・検証できる環境は、「考えるだけ」で終わらせない、
実現できる半導体エンジニアの育成を可能にします。

ミニマルファブを使った実習

ミニマルファブ
■S-PORTが目指す次のステージ~地域と日本の未来~
1.全国展開・ネットワーク深化
現在、高専機構の32高専が参画する半導体人財育成の連携を、全51高専へと拡大。知識・教材・実習環境を全国で共有します。
2.リスキリングの社会的インフラへ
現役学生だけでなく、企業技術者や社会人向けの学び直しの場としても機能。産業界のニーズに即した「即戦力」を継続的に供給します。
3.産官学連携ハブとしての発展
企業との共同研究・受託事業・人材交流などを通じ、日本の半導体産業の競争力強化に貢献し続ける戦略拠点として進化します。

S-PORTの説明をする猪原センター長
■産官学 約200名で行われた講演とパネルディスカッション
開所式に続いて開催された記念シンポジウムとパネルディスカッションでは、半導体・AI・ロボティクス分野の第一人者が登壇。日本の産業と教育の"転換点"等が議論されました。
■基調講演I「半導体産業のための 人材育成と高等教育の変革について」
安浦寛人 氏(九州大学 名誉教授/国立情報学研究所 副所長)
安浦氏は、「半導体産業は電気電子工学にとどまらず、材料、情報、データサイエンス、経営、医工連携など多様な分野が関わる総合産業であり、幅広い人材育成が不可欠」であると述べました。世界では設計と製造を分離する水平分業が主流となる中、台湾は国家戦略の下で産業集積を進めてきた一方、日本は転換の途上にあると指摘し、
「つくる・つかう・つなぐ」力を一体的に育成することの重要性を強調しました。また、「高専は、日本の技術者基盤を支える重要な存在」と述べ、COMPASS5.0事業で、
国立高専機構としての一体的な運営と各校の機動性を生かし、情報共有や試行錯誤を通じたアジャイルな教育改革が進んでいることに触れ、AIの進展や産業構造の変化が進む中、
次世代を見据えた先進的な工学教育に高専が先導的に取り組んでいる点に、大きな期待を寄せました。

九州大学 名誉教授 安浦氏
■基調講演II「ロボットのための AI基盤モデル」
尾形哲也 氏(早稲田大学 教授/AIロボット協会 理事長)
尾形氏は、「
AIとロボットを融合した『フィジカルAI』の進展が、半導体技術と密接に結びつきながら新たな産業領域を切り拓いている」と述べました。自身の機械工学、脳科学、情報工学にまたがる研究経験を踏まえ、
AIとハードウェアを統合的に扱う人材の重要性を強調しました。特に、「ディープラーニングと実世界のロボットを組み合わせ、社会実装を目標とする取組は、従来の研究中心のアプローチとは異なる価値を生み出している」と紹介し、こうした分野では、シミュレーションと実世界データの循環や、半導体技術が鍵となり、
教育段階から分野横断的な力を育てる必要があると指摘しました。高専は、機械・電気・情報を横断して「まず動くものを作る」教育に強みを持ち、AIとロボットを自然につなげられる教育環境にあると評価し、「S-PORTやCOMPASS5.0事業を通じ、
実践的な人材育成と産業との接続を進める高専の取組は、今後のフィジカルAI時代を支える重要な基盤になる」との期待を示しました。

早稲田大学 教授 尾形氏
■パネルディスカッション「高専における"半導体人財育成エコシステム"の構築」
登壇者は安浦氏、尾形氏に加え、田中章愛氏(ソニー・インタラクティブエンタテインメント、佐世保高専卒業生)、高倉健一郎教授(熊本高専)。モデレーターを岡田隆太朗氏(日本ディープラーニング協会 専務理事)と猪原センター長が務め、活発な議論が展開されました。
議論は、世界的な話題になっているフィジカルAIの話から始まり、若年層から地域と共にものづくり技術に触れる高専教育の重要性や、センシング、データ、ロボットなどの融合の動きに連動する半導体需要の増加の話題が展開されました。最後に、
早期からのものづくりに触れる教育が将来の人材の層を厚くすることや、佐世保高専や九州の高専・大学と産業界が連携し、台湾に並ぶシリコンアイランド九州の再構築を目指すためにも、S-PORTが
金融機関もしっかりと関与した産官学金のポートとなることを期待する話で結ばれました。

パネルディスカッションの様子

モデレーター 左から猪原センター長、岡田氏

登壇者 左から安浦氏、尾形氏、田中氏、高倉氏
■学生が主役の「高専未来協創セッション」― 研究成果・実践教育・企業との対話が生む次世代像 ―
本シンポジウムの目玉の一つが、「高専未来協創セッション」(ポスターセッション)です。全国の高専から集まった学生、高専OB起業家、各協会、及び民間企業からの参加者が、今まで学んだ内容や研究成果、研修の報告などをポスターとして発表しました。参加した学生は、産業界のリーダーたちと直接対話するなかで、次世代エンジニアの可能性を存分に示しました。
また、佐世保高専の卒業生で起業経験を持つ3名によるトークセッションでは、後輩たちに向けて
「海外には、まだまだすごい人たちがいる。どんどん外に出て、そうした人たちとつながってほしい」
「まずは恐れずに手を挙げること。手を挙げれば、必ず誰かが助けてくれる」
「高専生は社会に出れば『これ作れるよね』と期待され、自然とチャンスが巡ってくる。そのチャンスを逃さずつかんでほしい」
といった力強いメッセージが発信され、後輩たちに力強いエールとなりました。
産官学の幹部が学生の発表に耳を傾け、議論を深める光景は、S-PORTが目指す「人と技術が循環するエコシステム」を体現するものとなりました。

ポスターセッションの様子

佐世保高専卒業生の起業経験者が語るトークセッション 左から、wavelogy株式会社代表取締役 道上 竣介氏 令和2年(2020年)3月本科卒・令和4年(2022年)3月専攻科修了 、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント toio事業推進室シニアマネジャー toio開発者 田中 章愛氏 平成14年(2002年)3月本科卒、株式会社Hundred Semiconductors 代表取締役 居村 史人氏 平成12年(2000年)3月本科卒
■独立行政法人国立高等専門学校機構 理事長 中島 英治 コメント
高等専門学校は、昭和37年の創設以来、確かな学術基盤と実践力を兼ね備えた技術者の育成を通じて、我が国の産業と社会の発展を支えてまいりました。
近年、半導体分野における人材需要が急速に高まる中、国立高専では、現在全国32高専が連携し、産業界、国、自治体の皆様とともに半導体人財育成を推進しております。
半導体人材育成センターでは、産官学金連携によるオープンイノベーションを通じて、技術と人が循環するエコシステムを構築し、地域社会の課題解決を行う価値創造人財を育成し、我が国半導体産業の持続的な発展に貢献してまいります。

高専機構 中島理事長
【学校概要】
■佐世保工業高等専門学校
佐世保工業高等専門学校は、全国12の国立高専一期校のひとつとして1962年に設立され2022年で60周年を迎えました。本校が輩出してきた約10,000人は技術者・研究者として社会で活躍。その確かな実践力は各界から高い評価を得ています。令和4年度からは、GEARプロジェクトとともに、COMPASS5.0(次世代基盤技術教育のカリキュラム化)として半導体人財教育も進めております。特に世界的な半導体拠点の形成が進む九州において本校は、熊本高専とともに「半導体分野の拠点校」として密接に連携し、日本の産業基盤を支える高度な半導体技術者の育成に、全力を挙げて取り組んでいます。
所在地:〒857-1193 長崎県佐世保市沖新町1-1
校長:下田 貞幸
URL:
https://www.sasebo.ac.jp

佐世保高専外観図
■独立行政法人国立高等専門学校機構
全国51の国立高等専門学校を設置・運営。
中学卒業生を受け入れ、5年間一貫の技術者教育を実施。実験・実習を重視した専門教育により、20歳の卒業時には大学と同程度以上の知識・技術を習得。卒業生は日本の産業と社会の発展を担う中心的な役割で、約60年にわたり、ものづくり大国である日本を支えています。
所在地:〒193-0834 東京都八王子市東浅川町701-2
理事長:中島 英治
URL:
https://www.kosen-k.go.jp/

高専機構本部棟外観
■佐世保工業高等専門学校半導体人材育成センターの開所式に関するお問い合わせ
独立行政法人国立高等専門学校機構 佐世保工業高等専門学校
学生課 半導体担当
〒857-1193 長崎県佐世保市沖新町1-1
TEL: 0956-34-8428
E-mail:s-semicon@sasebo.ac.jp
URL:
https://www.sasebo.ac.jp/education/s-port/
■半導体分野全体に関するお問い合わせ
独立行政法人国立高等専門学校機構本部事務局 学務課教務係
〒193-0834 東京都八王子市東浅川町701-2
TEL:042-662-3143
E-mail:kyoiku@kosen-k.go.jp
URL:
https://www.kosen-k.go.jp/
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