長崎総合科学大学(長崎市網場町)グリーンヒルキャンパス大講義室で5月28日、「東長崎エコタウン構想」講演会が開かれた。主催は東長崎エコタウン協議会。
同講演会には大学、行政、事業者や地元自治会関係者など80人ほどが参加。開会のあいさつに続き、一般社団法人「全国ご当地エネルギー協会」代表副幹事で、同「徳島地域エネルギー」理事の豊岡和美さんが基調講演に立ち、徳島地域における低炭素化の推進について語った。
豊岡さんは「事業のビジョンとして『持続可能な地域作り』を明確に掲げ、地域が持つエネルギーを地域で開発・利用し、地域の人々が利益を享受できるようにコーディネートすること」と強調。人口が少ない徳島県佐那河内村で推進する風力発電事業、太陽光発電事業、小水力発電事業、木質バイオマス熱供給事業など、地域主導型事業の具体的事例を挙げながら紹介した。講演後の質疑応答では、わずか3年で事業を軌道に乗せた具体的なノウハウについて参加者から質問が相次いだ。
続いて「東部下水処理場のゼロ・エミッション化の進捗(しんちょく)状況」について、同事業を受託する三菱長崎機工・環境プラント部プラントグループ長の篠原信之さんが報告した。
東長崎エコタウン構想の一環として推進されている同プロジェクトは、長崎市と長崎総合科学大学、三菱長崎機工の3者共同で提案したもので、2012年3月下水道革新的技術実証事業(B-DASH)に約6億円の事業として採択された。東部下水処理場(田中町)の汚泥全てを処理し、燃料や肥料に変えることを目的とした下水のゼロ・エミッション化プロジェクトであり、2014年3月で実証事業は終了。講演会では篠原さんが現時点までの進捗状況を報告した。
ゼロ・エミッションとは1994年に国連大学が提唱した構想で、ある産業の廃棄物がほかの産業では有効資源になることで資源の循環が図られ、結果的に廃棄物を出さない仕組みを構築するという考え方。篠原さんによると「メタサウルス」と名付けられたゼロ・エミッション化のための技術は、汚泥を全量処理するまでの時間が従来の方式に比べ5分の1程度の時間で済み、5~6日程度でメタンガスなどの燃料や肥料の生成が可能だという。
「この方式では排出量が極めて少ないが、それでも1日1トン程度の脱水残渣(ざんさ)や固形燃料ができる。残渣は2次加工しなくても、そのままでも肥料として使える」と篠原さん。仕組みを説明する際にも「圧力鍋」「ビーフシチュー」「黒い餅」「みそやしょうゆ作りと同じ」など、わかりやすい表現を使い、参加者により具体的なイメージを伝えながら説明した。
篠原さんは長崎市農業センター(戸石町)で現在行っている肥料利活用試験などに触れ、「肥料試験ではすでに、ほうれん草とカブが非常においしく育った。カブは柿と間違えるくらい甘く食感もいい。現在実験中のトマトはまだ緑色だが、赤く色づくのが楽しみ」と報告し、6月下旬ごろ、肥料登録手続き(根拠法=肥料取締法第4条)が完了する見込みであることを説明した。「登録が済めば希望者には無償で配布する予定。ゼロ・エミッションへの道のりもかなり見えてきた」と締めくくった。
長崎総合科学大学の木下健学長は「これからも関係各所と密に連携を取りながら、本学が地元のエコタウン化に貢献できれば」と話した。