長崎・時津町に「なぜか目立たない雑貨店」

「ぜひ遊びに来てください」と呼び掛ける竹山さん

「ぜひ遊びに来てください」と呼び掛ける竹山さん

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 大型商業施設「イオン時津店」(時津町浜田郷)隣に開店したばかりの雑貨店が、「分かりやすいはずなのに、なぜか見つからなかった」と来店者の間で話題になっている。

「折り紙箋」を勧める竹山さん

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 6月6日にオープンしたのは、ウェルフェアトレード雑貨店「Rappo+(らぽプラス)」(同、TEL 095-894-5826)。店主の浦川隼さんは福祉事業所「アトリエらぽ」(長与町高田郷)に職員として勤務する。

 ウェルフェアトレードとは「Welfare=社会福祉」と「Fair Trade=公正な取引」を掛け合わせた造語で、社会的弱者と呼ばれる人たちが手掛けた製品やサービスを適正な価格で購入・利用することで当事者の生きがいや自立を支援する仕組み。同所はメンバーが製作した雑貨をイベント会場などで販売しており、購入客から「店舗はどこか」という質問をよく受けるという。

 浦川さんは「雑貨が大好きな母は『定年退職したら雑貨店を開きたい』という夢を昔から持っており、ちょうど定年を迎えた。事業所でも『イベント販売だけでは限界があるので店舗を持った方がいいのでは』という話が出た。そこにイオン時津店の隣に空き店舗があるという情報が入ってきた。不思議なくらいタイミングが合ったことが私の背中を押してくれた」と振り返る。

 元理髪店だった同店。手を加える前の雰囲気は「どこからどう見ても理髪店」だったという。予算がなかった浦川さんらは「なるべく自分たちで内装工事や什器の設置などを手掛ける」ことを心掛け、少しずつ現在の雰囲気を作り上げた。「ほかに方法がなかったので壁は自分たちが手作業で白く塗った。意外と好評だったので結果オーライ。作業所の人たちや多くの仲間に助けてもらい、本当にありがたい」とほほ笑む。

 同店では「アトリエらぽ」をはじめとする長崎県内はもちろん、福岡や佐賀、岡山など全国各地の福祉作業所が製作した雑貨や、手作り作家が手掛けた作品から同店が選りすぐったものを取り扱う。「私は職員としてきちんと給料をもらっているので、この店で自分の利益を得ようとは思っていない。母や仲間たちの役に立てばいい。その分あくまでも手作り製品にこだわる。大量生産品は一切取り扱わない」と浦川さん。平日は「アトリエらぽ」の施設外就労場所として同所スタッフの竹山瑞生(みずき)さんが、週末は浦川さんの母親が「念願の雑貨店」を切り盛りしているという。

 店内には「ボックスギャラリー」を設置しており、自分が手作りした雑貨を陳列して販売したい人であればプロ、アマ、初心者を問わず誰でも委託販売ができる。1区画のサイズは高さ幅ともに約35センチ。月額利用料は区画の場所により1,500円~2,250円。実際に売れた場合には販売手数料として売り上げ金から10%が差し引かれる。全部で50区画を用意する。

 竹山さんは「私が働いている様子を見ようと思って、祖母が店の近くまで来たと聞いた。散々探し回ったが結局見つからず、諦めて帰ったらしい。こんなに分かりやすい場所なのに不思議」と首をかしげる。その後も「やっと見つけた」と言いながら入店する人や、しばらく外から店内を覗き込んだ後、「ひょっとして雑貨屋さんですか」と恐る恐る入店する人など、「なかなか見つからなかった」と話す人が後を絶たない。

 浦川さんは「目の前は国道だし、ここも道路に面しているので場所も分かりやすいはず。それなりに看板も出している。こんなに目立つから思い切ってここに決めたのに、なぜか目立たないなんて」と困惑する。現在、国道側からよく見える壁面に案内看板の準備を進めており、「どうか目立ちますように」と心の中で祈っているという。

 同店のフェイスブックページは竹山さんが専門学校でデザインを学んだ経験を生かして運営している。「せめてネット上で目立つように『いいね』してもらえるとうれしい。ほかにも楽しめるサイトを模索中」と明かす。浦川さんは「福祉に対する関心の有無に関係なく誰でも気軽に立ち寄れる『おしゃれな雑貨店』を目指している。商品のセレクトやディスプレイにもこだわっており、一度来店した人の多くがリピーターになってくれる。手作り雑貨が好きな人は最初は迷うかもしれないが、どうか迷わず来店してほしい」と呼び掛ける。

 営業時間は10時~19時。

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