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長崎の凧職人と書道家が仏・凧揚げ大会から帰国

大久保さんの指導でハタ作りを楽しむ子どもたち

大久保さんの指導でハタ作りを楽しむ子どもたち

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 フランスで開催された凧揚げ大会に招待された長崎の凧職人と書道家ら3人が7月10日、全日程を終えて無事に帰国した。

書写を終えた子どもたちとの記念撮影

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 長崎凧(ハタ)専門店「大守屋」(長崎市古川町)店主で凧職人の大久保学さんと書道スタジオ「Start」(中町)店主で書道家の福山嘉人さん、同店で指導する書道家・山下草碧さんの3人は、フランス西部の地方都市「ノートルダム・ド・モン」で開催された凧揚げ大会「A TOUT VENT!」(開催期間7月3日~6日)に招待され、6月27日からおよそ2週間の予定で渡仏していた。今年13回目を迎える同大会は、仏国内外から毎年6万人ほどが集まる人気のフェスティバル。砂浜の会場にはさまざまな形のカラフルな凧が揚がり、夜空に向けた凧揚げも行われた。

 昨年、長崎県美術館(出島町)で開かれた「テオ・ヤンセン展」のアシスタントを務めたフランス人の工芸作家、リオネル・ロイさんが美術館に通う途中で立ち寄った大守屋のハタに魅了され、大久保さんを同大会に誘ったことがきっかけ。大久保さんが書道とのコラボを多く手掛けてきた福山さんにも声を掛けて一緒に参加することになり、さらにフランス在住の経験がある山下さんも通訳を兼ねて加わった。日本人や日本の凧が同大会に参加するのは初めて。諸経費や旅費に充当するために初めて取り組んだクラウドファンディングは、7月5日の締め切り日までに目標額を超える103万3,000円を達成して成功した。

 大久保さんらは私立と公立の小学校で子どもたちに「ハタ作り」や「書写」などを指導した。子どもたちは大喜びでそれぞれの課題に取り組んだという。「子どもは万国共通。言葉が通じなくても目を輝かせて取り組んでくれた。全部のクラスを教えることはできないので、下級生がうらやましそうに覗いていたのがちょっとかわいそうだった」と大久保さん。福山さんは「書写の時間に意味がよく通じていなかったのか、漢字になる前の象形文字を書いてしまう子が続出したが、みんなかわいかった。子どもたちは少しずつ打ち解けたが、最後は本当に名残惜しかった」と振り返る。ワークショップの様子は地元の新聞が取り上げた。

 大会会場では大久保さんの凧揚げ技術に拍手が起こり、特設の日本ブースには多くの人が訪れた。山下さんがフランスに持参し、「本当は手放したくなかった」という書道作品「魚字尽」は、フランス人の柔道家がとても気に入り購入したという。「日本の凧揚げとは雰囲気も揚げる技術もかなり違うが、国や文化は違ってもそこは共通の興味を持つ者同士。すぐに日本の凧揚げのコツを習得してくれたし、たちまち互いに意気投合した」と話す大久保さんらはラジオ局に招かれて生放送に出演。同大会の代表・ダビッドさんやイタリア人の凧アーティスト・マリオさんは、地元のローカルテレビ番組で大久保さんのことや装飾品としてのハタの魅力などを紹介した。

 バカンスのため家族で大会会場近くに滞在していたフランス人の「タリー」さん(9)は日本が大好きな小学生。大久保さんによると、毎日ブースを訪れて中の様子を楽しそうに眺めながら「大人になったら日本に行きたい」と話していたという。大久保さんは「フランスでは皆さんに高い評価をもらったが、フランスの人たちからは『風と遊ぶ』ことを教えてもらった。彼らが心から凧揚げを楽しんでいることに深く感動した。これまで競技としてのハタ合戦や伝統を守ることばかりにこだわり過ぎていたことに気づかせてもらった」と話す。勤めていた頃、休日を利用して小川凧店(風頭町)に通い続けて凧作りを学んだ大久保さんは「小川さんの指導のおかげで今がある。小浦凧店(星取1)さんが鮮やかな色の紙を提供してくれるおかげで作り続けることができる。その結果がフランス行きに結びついた。支えてくれた皆さんに改めてお礼を言いたい」とも。

 福山さんは「大守屋さんも私も留守中にたまった仕事の処理に追われているが、落ち着いたらささやかな報告会を開きたい」と話す。

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