長崎県庁(長崎市江戸町)で3月28日、ビジネスプランコンテストの表彰式が行われた。
同コンテストは県が創業支援機関や金融機関と連携し、創業しやすい環境を醸成する取り組みの一環として毎年開催しているもの。今年で4回目を迎える。
佐世保市で英会話教室を営む中尾李沙さんは、外国人と共存する基地の街という地域特性を生かした人材育成に加え、観光へつなぐ取り組みが高く評価され、最優秀賞を受賞した。
中尾さんは米軍基地居住区内に住む外国人の自宅にホームステイする「国内ホームステイ」を英会話教室に取り入れた。小中学生が佐世保基地に暮らす外国人とのグループ学習を通して英会話力を向上させると同時に、新たな観光資源としても活用できるというユニークさとビジネスとしての可能性の高さが受賞につながった。
取り組みはまだ始めたばかりで、今年の夏休みと冬休みの期間中、同市内にある「森きらら」「海きらら」の両施設で各1回の計4回、総勢50人規模でのイベントを予定する。ほかにも烏帽子岳(佐世保市)で「イングリッシュキャンプ」と称した合同キャンプも開催するという。中尾さんは「将来的には修学旅行の一環として利用してもらえるよう、企画をさらに練り上げたい」と意気込む。
「十八銀行賞」は、ネットクリーニングのシステム開発に取り組んだ南島原市の神崎健輔さん・志織さん夫妻(神崎の崎は大が立の下の横棒なし)。5年ほど前から家業のクリーニング店を手伝い始めた健輔さんは、PRのためにクリーニングの知識を生かして家庭でも簡単にできる染み抜き法などを紹介したブログを始めたところ、今では「洗濯博士」として雑誌にも取り上げられるほど有名になったという。夫妻が暮らす南島原市では生活圏内に商店がないため、昨年に双子を出産したばかりで育児に専念しなければならない志織さんは、買い物をネットショッピングに頼らざるを得ない生活となり、いわゆる「買い物難民」になっていたことから、「クリーニングも、家から一歩も出ずに利用できるネットクリーニングがこれからは普及していくのではないか」と考えた。
業者にシステムを依頼したところ外注費が高額だったため、独学で勉強しながら10分の1の予算で作り上げたという。「ほかにも、タンスの中にある洋服の稼働率は一般的に2~3割と言われていることから、タンスをスッキリさせつつ、着たい服を手軽に楽しめるシステムを手掛けたい」とも。
親和銀行賞は、ショッピングサイト(ECサイト)管理システムを開発した南島原市の山口秀雄さんが受賞。かつて派遣労働者だった山口さんは「もの売りをやってみたい」と一念発起してECサイトを立ち上げたが、商品発送に追われながら、新たな商品を登録する作業を延々と繰り返さなければならない毎日だったことから、「効率よく運用するためにシステム化できないか」と考えて開発した管理システムが受賞へとつながった。「今まで手をこまねいていた人たちにもこのシステムで参入の機会を増やし、チャレンジする仲間を増やしていきたい」と山口さん。
松浦市にカフェ併設の直売所をオープンさせた松尾秀平さんには長崎県民信用組合賞が贈られた。家業で農家などに種や苗を収める種苗店を営んでいた松尾さんは「あまり知られていないが、野菜などは多くの新品種が毎年出ているものの、認知されるのに数年かかる息の長い商売」と説明する。自ら栽培した新品種を「実際に客の手元に届けたい」と考え、カフェを併設した直売所を始めた松尾さん。カフェは「おいしいコーヒーで一息入れてもらう空間」としてだけでなく、新品種を使ったデザートやフードメニューも用意。認知度アップに向け、5月ごろまでは新品種のイチゴを使ったスムージーも提供する。