長崎のカフェ「豆ちゃん」(長崎市東古川町、TEL 095-825-4455)で4月24日から、オランダの写真家カリー・マルケリンクさんの写真展「記憶・風景・写真」が開催される。
「Memory Traces」より ロシアのウラン採掘場(C)Cary Markerink
マルケリンクさんはオランダを代表する写真家。10年ほどかけて、チェルノブイリの原発内部やゴーストタウン化したまちの風景、旧ロシアのウラン採掘場、内紛が起こったコソボやサラエボ、原爆が投下された長崎や広島など「負の記憶を持つ風景」を撮り続けている。昨年、長崎市の原爆落下中心地など長崎の風景を含む写真集「Memory Traces」を発行し世界各国で話題を集めた。長崎では写真展が行われていなかったため、初開催となる。同展ではA2サイズ(42センチ×59.4センチ)の写真6点を展示する予定。
長崎でマルケリンクさんの写真を紹介したいという東京のキュレーター菊田樹子さんと、同店の吉田隆さんが3月に出会い、急きょ写真展の開催が決まった。写真集の解説の中で、菊田さんは「長崎県には、歴史や記憶、そして原爆について考えるきっかけとなる作品を何としても残したかった。(中略)マルケリンクはこれまでに、画一化が進む現代の風景から、記憶や歴史を読み解く挑戦をしてきた。目に見える明らかな痕跡がないからといって、そこで起きた事実が消える訳では決してない。マルケリンクは目の前に広がる風景を、繰り返し上書きされたものとしてとらえる。(後略)」(「European Eyes on Japan/Japan Today vol.10」カタログより抜粋)と記す。
24日18時からは、テレビ長崎取締役でドキュメンタリー制作者として数々の賞を受賞している山本正興さんとマルケリンクさんのトークセッションも予定。マルケリンクさんは人類が残した悲劇の痕跡や復興したまちの姿の意味を写真を通して投げかけてきたアーチストの視点で、山本さんはさまざまな人間の姿を映像を通して訴えてきたドキュメンタリー作家の視点で、東日本大震災と原発事故によって大きな転換期にある日本の方向性について話しを進めていく。
吉田さんは「写真に興味がある人、原発問題を考えている人などひとりでも多くの人に彼の作品を見てほしい。原発の問題をこれまでとは違う視点で見ることができるイベントになると思う。2人でどんな対談になるのか私自身も楽しみ」と話す。
同店の営業時間は11時30分~20時(日曜18時まで)。月曜・火曜定休。トークイベント参加費は1,000円(ドリンク付き)。定員40人。同店で申し込みを受け付けている。写真展開催は5月29日まで。