長崎市出身の草場尚也さんの初監督作品「雪子 a.k.a.」がの上映がユナイテッド・シネマ長崎(長崎市尾上町)で始まり、2月1日、監督らが舞台あいさつを行った。
東京で小学校教諭をする一人の女性ラッパー雪子が自分と向かい合い、答えを探す姿を描く同作。現在は東京を中心に活動する草場さん。「自分と同じように地方出身で、東京で仕事をしている主人公のバックグラウンドを表現しながら、自分のルーツやアイデンティティーをたどり、自分探しをする作品を目指した」と話す草場監督。好きなヒップホップ・ミュージックや自身も小学校教諭を目指していた経験をかけ合わせた作品になっている。
満員での上映後に行われた舞台あいさつには、草場監督と主人公・雪子がラップバトルで対戦するニシキ役を演じた佐世保市在住のラッパー・カツヲさんが登壇。草場監督は「教員を目指して大分大学に進学したが、映画との出合いがあって映画監督を志すことになった。商業映画初監督作品を地元長崎で撮影し、11年越しで地元での上映を実現できた」と話した。「長崎出身という主人公のバックグラウンドを描くに当たり、家族の存在が重要と感じた。長崎で撮影することや長崎弁を流ちょうに話してもらえるキャストにもこだわった」と振り返る草場監督。「ラップバトルの対戦相手も長崎で活躍しているラッパーにお願いしたかった」と、カツヲさんに声をかけた経緯を説明した。
カツヲさんは出演のオファーを受け、草場監督が佐世保に会いに来てくれたことを振り返りながら、「『ラップ映画を撮りたいのではなく、雪子という女性の一人の生き方を作品にしたい』と監督から熱く語ってもらったことで出演を決めた」と振り返る。
主演の山下リオさんについて、「もともとミュージカルをしていて歌唱方法が違うと戸惑っていたが、とてもうまい」とラップの完成度の高さに驚くカツヲさん。ラップバトルの撮影を行ったライブハウス「BETA」(浜町)については、「長崎でヒップホップといえばここと言えるような場所」と話す。草場監督は「(BETAには)普段ステージに立つカツヲさんや観客の歓声から生まれるリアリティーがあるのでは」と話す。
「長崎があまり好きじゃないと思っていた時期があったが、東京で生活する中で長崎が好きじゃないのではなく、長崎で生きていた自信の持てないあの頃の自分が嫌だったことに気づいた。作品を撮ることが決まって高校時代の同級生が協力してくれたり、恩師の先生が会場にも駆けつけてくれたりと、あの頃の自分が間違ってなかったのではと思えるようになった」と振り返る草場監督。「より多くの人に作品を見てもらいたい。ぜひ映画館に足を運んでもらえれば」と鑑賞を呼びかける。
ユナイテッド・シネマ長崎での上映は2月6日まで。