
長崎県内最大の公募展「第70回長崎県美術展覧会(県展)」が9月28日、長崎県美術館(長崎市出島町)で始まる。主催は長崎県美術協会。
素材にも注目が集まった原口さんの彫刻作品「Enjoy Your Life!」
今年で70回目を迎える同展は1956(昭和31)年に長崎県と県教育委員会、長崎市と市教育委員会、同協会が主催して初開催。長崎会場は浜屋百貨店と岡政百貨店で開催していたが、1965(昭和40)年の第10回展からは同年完成した県立美術博物館に、2005(平成17)年の第50回記念県展からは同年開館した長崎県美術館に舞台を移していた。今年は第40回国民文化祭と第25回全国障害者芸術・文化祭「ながさきピース文化祭2025」も開催されていることから、県内の美術界では盛り上がりを見せている。
8月上旬に募集し、「日本画」「洋画」「彫刻」「工芸」「書」「写真」「デザイン」の7部門に今年は1342作品の出品があった。受賞者・入賞者が9月27日に発表され、原川広子さん(佐世保市)の書作品「由良の門を」が最高賞となる西望平和賞に選ばれた。
書道部門からは11年ぶりの最高賞を受けた川原さんの作品は起承転結がよく考えられ、各行の動きや濃淡による中央の高まり、潤渇による立体感など仮名作品としての情感を表現していることが高く評価された。
各部門の最高賞となる知事賞では「かくれんぼ」をしている幼い子どもを描いた「もういいよ~」日本画・植木美沙子さん、画面いっぱいに具象的に描かれたセミの幼虫が見る人にメッセージを送っているかのような「命日」洋画・林田澪音さん、エキゾチックな女性を、段ボールを使い塑像の手法で表現した「Enjoy Your Life!」彫刻・原口久美さん、平和を希求する織物作品「通じ合う心 言葉を超えて平和を思う」工芸・熊野淸貴さん、巨大な船底と作業員を大胆に切り抜いた「センテイノドックマン。」写真・三宅武尊さん、「世の中にあふれかえる情報に流されず自己のアイデンティティーを大切に」というメッセージを込めた2枚連作ポスター「好き」デザイン・野中凛香さんが、それぞれ受賞した。洋画部門の新人賞に当たる特別賞「野口彌太郎賞」には本田愛美さんが描いた「枝先の旅人」が決まった。
発表を前に会見を開いた実行委員長の江副功さんは「昨年の県展では長崎日本大学高校在学中に入賞し、現在は武蔵野美術大学に通う林田さんが今年は部門最高賞に輝くなど若手の活躍もある。洋画部門は美術部のある高校が切磋琢磨(せっさたくま)し、盛り上がりを見せている。原口さんの彫刻作品は段ボールを素材に使う珍しい作品で、サステナブルや多様性といった現代的課題も踏まえられているのでは」などと講評した。
入賞・入選作品の一般公開は佐世保市博物館島瀬美術センター(佐世保市)や諫早市美術・歴史館(諫早市)でも行うほか、壱岐市と東彼杵町での移動展も予定する。
開館時間は10時~18時(最終日は16時閉館)。入場料(当日)は、一般=500円、70歳以上=400円、高校生=200円、小中学生無料。10月12日まで。