「第3回詩のボクシング長崎大会」が9月11日、長崎市立図書館(長崎市興善町)で開催され、予選を勝ち抜いた16人が熱戦を繰り広げた。
詩のボクシングは、リングに見立てた会場で青コーナーと赤コーナーに別れた個人が持ち時間3分で自作の文章を自由に表現して、どちらがより観客の心に届いたかを判定し競う言葉の格闘技。出場者はそれぞれ「リングネーム」を持ち、試合はトーナメント戦で行う。
試合に先立ち、3人1組で戦う団体戦「声と言葉のボクシング」のデモンストレーションが披露された。新しい言葉の表現方法を目の当たりにした来場者は、感心したり大きな拍手を送ったりするなど、さまざまな反応を見せた。
出場者は、ゴミについて語る人、「くわず芋」をもらったことに起因する心の葛藤(かっとう)を題材にする人、「うんち」をいかにきれいに表現するかという言葉遊びを行う人、亡くなった我が子への鎮魂歌を表現する人などさまざま。長崎大会らしく「原爆」をテーマにする出場者に姿もあった。
題材が身近なものであればあるほど会場からは「クスっ」という笑い声や黙ってうなずく人も多く見られ、試合が進むにつれ会場の雰囲気が和んでいった。審査員の一人で劇作家の津田桂子さんは「前回も審査員をさせていただいたが、回を重ねるごとに立派な大会になってうれしい」と話す。
決勝戦では福岡県在住の「くわまる」さんと佐賀県在住の「キャットテール」さんの対戦となり、それぞれ「10年前の妻」と「母が書いた『歯を磨きませう』の張り紙」を題材に、決勝戦らしくレベルの高い試合となった。
決勝戦ではさらに、自作の文章以外に、その場でそれぞれ別の「お題」が与えられ、考える時間なしに即興で表現するという高度な技量が要求される。審査は自作と即興の総合点で判定される。「くわまる」さんには「ストリート・ミュージシャン」、「キャットテール」さんには「相合傘」というお題が与えられ、即興パフォーマンスを繰り広げた2人に、いつまでも拍手がやまなかった。
審査の結果、優勝は「キャットテール」さんに決定し、10月16日に東京で行われる全国大会への出場認定証が、日本朗読ボクシング協会代表の楠かつのりさんから授与された。キャットテールさんは「主婦なので気軽な気持ちで出場した。今まで勝ち進んだ経験があまりなかったため、本当にわたしでいいのか戸惑っている」と謙虚な姿勢を見せる。
楠さんは「試合なので勝ち負けはあるが、この大会をきっかけに『言葉』で楽しく表現することを続けていってほしい。ぜひ皆さんも始めてほしい」と語り大会を締めくくった。