東山手甲十三番館(長崎市東山手町)で現在、「真鍋健一・新作能面展」が開かれている。
真鍋健一さんは13年ほど前に諏訪神社(上西山町)で行われた能面展でその美しさに魅了され、自ら調べたり教室に通ったりしながら仕事の合間に能面を手作りしてきた。
能面作りはヒノキの角材に型紙を当て、角を落としてからノミなどで順に形を整えた後に独特の質感に仕上げるため、胡粉(ごふん)と呼ばれる貝殻の粉を膠(にかわ)で溶いて下地に塗り、乾燥させてから上塗りを行い、さらに乾燥させてから細かい胡粉(ごふん)を塗り重ねるという非常に根気が必要な作業。
「最初のころは1面作るのに1年はかかった」と真鍋さん。現在は半年ほどでできるが、色を落ち着かせたり、乾燥させたりする時間がかかるため、それ以上早く作ることはできないという。一部の作品には解説が添えられ文化財である壁面を傷つけないようにワイヤでつるされている。展示会初日の5月17日には団体客や海外からの観光客らが作品を楽しんだ。
会場の「東山手甲十三番館」はオランダ坂の入り口付近にある1891(明治24)年に建てられた洋館で一時はフランス領事館としても使用されていた。2006年に長崎市が所有権を取得し、翌年、国登録有形文化財の指定を受け、2009年4月から一般無料公開された。しかし、昨年10月で一般公開が中止されるとの情報に接した人たちが長崎市文化財課と協議。NPO「長崎の風」(江平2)が同課と委託費無償で協働運用事業者の覚書を交わし、同月から運用を開始した。
文化財としての規制を守りながら1階部分をギャラリー喫茶として運営し、「居留地時代1865のコーヒー」(=280円)などを提供している。真鍋さんの妻が同NPOのメンバーであることが縁で今回の展示がきまった。
真鍋さんは「今まで30作品ほど作ってきたが、作るたびに感動があり毎日がとても楽しい。能面に興味がある人はもちろん、知らない人もぜひ一度その魅力に触れてほしい」と話す。
同館の黒田雄彦館長は「オランダ坂付近は重要伝統的建造物群保存地区の規制で自販機などがない。文化財の中で当時のコーヒーを味わいながらアートに触れるのは究極の癒やしになる。これからもいろいろ企画しているので楽しんでほしい」と話す。
開館時間は11時30分~16時。月曜休館。入場無料。5月30日まで。