長崎の学生ボランティア団体「長崎Sip-S」が11月4日、宮城県石巻市で行ったスタディーボランティアの報告会を長崎大学(長崎市文教町)で開いた。
「長崎Sip-S」は昨年の東日本大震災が発生した翌日に長崎の大学生らが被災地支援を目的に立ち上げた団体。自分たちができることは何かと、まず街頭募金活動から始め、チャリティーコンサートや被災地支援を考えるシンポジウム、被災地へのボランティア派遣などさまざまな活動に取り組んでいる。
今回は9月21日~28日に行った宮城県石巻市への「第2回スタディーボランティア派遣」についての報告会で、団体メンバー約40人、一般学生や社会人などの参加者約30人が集まった。メンバーらは約1週間の派遣活動の中で、石巻市立渡波小学校の清掃活動と石巻市内の2カ所の仮設住宅でカフェサービスを行ったと報告。ブース別発表では、「自分たちにできること」「石巻の現状」「忘れてはならないこと」「防災-ここから私たちにできること」の4つのブースに分かれ、それぞれ担当の学生らが発表した。
「忘れてはいけないこと」を発表した長崎ウエスレアン大学現代社会学部4年の陣内誠也さんは「1週間、被災地に足を踏み入れて現地で見聞きしたことから感じるのは、復興はまだ完了していないということ。1年半が経過し情報が薄れつつあり、少しでも思い出してほしい」と話す。陣内さんは被災地で行ったカフェサービスで「自分に何かできるか?」と考えていたところ、将棋ができることに気付き、一人の年配の男性と将棋を指したところ、「とても楽しかった。ありがとう」と笑顔で感謝されたという。「もし将棋ができなければ、あの笑顔を見ることはできなかった。自分ができることを精いっぱいやるのが支援だと気付かせてもらった」と振り返る。
「防災-ここから私たちにできること」のブースでは被災地がもともと地震が多い地域であり、過去の津波警報でも大したことがなかった経験から避難すること自体が面倒になり、大きな津波被害につながったことを現地で知ったことなどが報告された。被災後の衛生状態の劣悪さや、物資不足から鉄パイプでさえ盗まれているなど、一般の報道からは知ることができない情報を知ったことなども次々に発表された。長崎大学環境科学部3年の元永愛菜さんは「今回初めて被災地に行った。自分たちも何かしたいという思いで行ったが、現地での震災の現実は想像以上だった。時間はかかるだろうが前向きに進むことで現実を変えていけると信じている」と力を込める。
参加者には被災地での写真や参加した学生らの思いをまとめた35ページほどの報告書が配布され、報告を聞きながら熱心にメモをしたり質問していた。参加した男子学生の一人は「良かれと思ってがれき撤去することが現地の人の仕事を奪うとは気付かなかった。気付かずに迷惑をかけたら互いに不幸。機会があれば今度は自分も派遣に参加してみたい」と話す。
同団体代表の長崎県立大学シーボルト校看護栄養学部2年の川上美由紀さんは「発足当時、街頭募金から始まった活動がこうして広がるには協賛いただいた方々をはじめ多くの人の支えがあってこそ。以前の派遣でお世話になった方への再会を喜びつつも、今も残る山積みのがれきや荒野に心が痛む。しかし少しずつだが仮設住宅の方の笑顔など着実に復興は進んでいると思う。これからも被災地の復興に寄り添い、同時に学生が人として少しでも成長できる糧になればと思う」と話す。