長崎電気軌道は開業95周年にあたる11月16日、明治時代に製造された電車を記念運行する。
同社は1915(大正4)年11月16日、病院下電停から築町電停までの約3.6キロの区間で営業運転を開始した。営業開始当時の車両は8両、資本金は50万円だったという。
記念運行する電車は1911(明治44)年5月に川崎造船所で製造された160形で、車号は168号。当初は製造された月に福岡の九州電気軌道(現在の西日本鉄道の母体)でデビューし、1942(昭和17)年に合併で北九州線に移った後、福岡市内線に転属された。その後は1959(昭和34)年2月に同社が譲り受け現在に至っている。
現役としては最古の木造ボギー車と呼ばれる車両で、東京、大阪以外の都市で初めてエアブレーキが搭載されたという。重量は14トン、車体の長さ約11.4メートル、幅は約2.2メートル、高さ約3.7メートル。一般的な電車の車輪直径は660ミリだが、西鉄時代はスピードが要求されたため大型の838ミリで設計。1984(昭和59)年から翌年にかけての大掛かりな改修工事により外観や内装はきれいに復元整備されている。
記念運行は車掌が乗務しツーマン運行が行われる。運転席には現在のような椅子はなく、運転手は立って運転する。天井の照明は蛍光灯ではなくクラシックな白熱電灯が取り付けられ、ダブルルーフ構造の車内が明治の雰囲気を漂わせている。発車の合図はもちろん「チンチン」という鐘の音。
運行は10時に浦上車庫前を発車する始発便から15時59分に同所に到着する最終便まで、午前4便、午後4便を運行予定。特別運行のため、スマートカードの使用はできない。
長崎電気軌道の広報担当者は「普段は見られない車両なので、14日に行われる恒例の電車まつりも含めて大いに楽しんでいただきたい」と利用を呼びかける。「写真撮影などは安全に十分留意してマナーを守っていただきたい」とも。雨天時には記念運行は中止される。