長崎市在住の主婦・井上智子さんがビワの種から「芳香蒸留水」を作り、現在起業を目指している。
芳香蒸留水とは植物から水蒸気蒸留法で精油を抽出する際に出る副産物で、精油の芳香成分が少し溶け込んでいるため香りを放つ。「アロマウォーター」「ハイドロゾル」などとも呼ばれる。
井上さんは千葉県生まれ。長崎に次いで全国第2位のビワ生産高を誇るが、自身はビワが苦手だったという。今年6月、本人以外は全員がビワ好きだという家族とともに「びわっちファーム太陽の郷」(長崎市弥生町)を訪れた井上さんは、今までの先入観が覆される体験をした。「私のビワに対する印象は、『ベタベタする』『剥きにくい』『妙な甘さがある』というものだった。ところが肉厚でジューシーな『長崎甘香』を食べた瞬間、生まれて初めてビワを『おいしい』と感じた」と振り返る。
前職でアロマを扱う仕事をしていた井上さんは、「長崎甘香の種からハイドロゾルが作れないか」と思いつき、ビワの種を持参して蒸留器を持つ福岡の知人を訪ねた。無事に蒸留が完了し、アロマの専門家でもある知人は「これは非常に面白い。今までにない香り」と太鼓判を押した。井上さんは濃度に気を配りながら試作を続け、今月ようやく満足できるものにたどり着いたという。
「きっかけは種をただ捨てるのがもったいないと思ったから。少しでも長崎びわの知名度向上に役立てばうれしい。長崎にゆかりがあるので『シーボルト・ウォーター』と名付けてみた」とほほ笑む。井上さんは今年中の起業を目指す。