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新長崎市史の普及版 「わかる!和華蘭」刊行 古代から現代まで100テーマ

好文堂書店の富澤昭子さん

好文堂書店の富澤昭子さん

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 長崎市史編さん委員会は3月20日、「新長崎市史」全4巻を分かりやすくコンパクトにまとめた普及版「わかる!和華蘭」を刊行した。発行は長崎新聞社(長崎市茂里町)。

近代「活字メディアの誕生」

 1919(大正8)年から1938(昭和13)年にかけて編さんされた「長崎市史」は、長崎学の第一人者だった故・古賀十二郎さんが執筆した「風俗編」などで高い評価を受けた。長崎市はその後、「市制50年史」や「市制65年史」を刊行。しかし、時代の流れが体系的に整理された最新の通史が必要であると感じた長崎市は市制施行120周年に当たる2009年、長崎市史編さん委員会を結成。委員長には元長崎市立博物館長の原田博二さんが就任した。

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 同委員会は2012年3月に刊行した第2巻「近世編」(B5版、971頁)を皮切りに、2013年3月に第1巻「自然編、先史・古代編、中世編」(同、728頁)、同年5月に第4巻「現代編」(同、972頁)、昨年3月に第3巻「近代編」(同、946頁)をそれぞれ刊行。およそ75年ぶりに新しい長崎市の通史が完成した。

 同委員会はその後、内容をコンパクトにまとめた普及版を企画。同委員会が厳選した100テーマを監修して長崎新聞社が編集・発行を担当した。刊行を見届けた同委員会は3月末、所期の目的を達して解散した。

 タイトルの「和華蘭(わからん)」とは、和(日本)、華(中国)、蘭(本来はオランダを指すが西洋という意味)の文化が交じり合い長崎独自に発展した文化風土を指す。鎖国時代に唯一の海外との交易地として栄えた長崎は、風習や食文化などに独特の和華蘭文化が今でも幅広く根付く。タイトルは「和華蘭が分かる」という意味の語呂合わせ。

 内容は「自然」「先史・古代」「中世」「近世」「近代」「現代」「総合」の7つに区分されており、自然では「海と長崎」、「長崎の大地」、「長崎ゆかりの動植物」の3テーマを見開き2ページでそれぞれコンパクトに解説している。先史・古代では「氷河期の長崎」から「律令制下の長崎」までの4テーマ、中世では「鎌倉時代の長崎」「元寇と長崎」「秀吉領都市長崎」「南蛮美術」など11テーマを取り上げる。

 中でも「秀吉領都市長崎」では、1587(天正15)年6月に「伴天連(ばてれん)追放令」を布告した豊臣秀吉が藤堂高虎を長崎に派遣して「長崎」「茂木」「浦上」をイエズス会から取り戻した後、長崎に住むキリシタンに巨額の罰金を課した史実を「長崎代官の任命」という項目でまとめている。

 次の項目「長崎奉行の任命」では、後に唐津藩主となる寺沢広高が1592年、初代長崎奉行に就任。本博多町(現在の万才町)に屋敷を構えるが、関が原の戦いで東軍に属したため秀吉の死後も留任したことや1603年に解任されたことが書かれている。

 3つめの項目「村山等安の台頭」では、当時のリーダー的存在であった当人(頭人)の身分を偽って秀吉の信頼を独占した経歴不詳の人物・村上等安について言及。肥前名護屋城(佐賀県唐津市)で秀吉に謁見して懐に入り込み、秀吉から洗礼名のアントニオをもじって等安という名前をもらった上、長崎代官に任命された等安。長崎には内町と外町と呼ばれる町があり、等安は54の外町を代官として一手に支配する。さらにルソン(フィリピン)、高砂国(台湾)への朱印状貿易を幅広く行い、九州の諸藩に対して大名貸(だいみょうがし)と呼ばれた金融業を行うなど、豪商としても辣腕をふるったという。

 等安に代わって代官になった「末次平蔵の台頭」の項目では、等安の後ろ盾だった長谷川藤広が死去したことで力を失った等安は、1617年に代官を罷免され、さらに大阪の陣で豊臣方へ加担していたことが露呈。江戸で斬首刑になり、家族もことごとく処刑されたため絶家となったことなどが記載されている。

 次の近世に関しては「長崎奉行と長崎代官」から「近代都市長崎の誕生」まで28テーマ、近代は明治以後を取り上げた「近代長崎の変遷」から「戦時下の市民生活」まで22テーマを解説。現代では戦後、平和都市への復興を目指す「現代長崎を見る視点」から「市域拡張の歴史」まで20テーマ、総合では長崎の伝統と文化に関する10テーマと食文化に関する2テーマをそれぞれ取り上げ、全体で100テーマにまとめている。

 同書のあとがきで原田委員長は「本書は入門書として若い世代から年配の人まで幅広い人たちに読んでもらえるよう、見開き2ページで一つのテーマ(題材)が完結する構成にした。写真や図版をできるだけ取り入れ、巻末には史跡マップと年表も掲載。厳選された100テーマは、きっと興味深く読んでもらえると思う」と結んでいる。同書には小学生でも読めるよう随所に「ふりがな」を施し、できるだけ分かりやすい表現を心掛けたという。

 好文堂書店(浜町)では郷土コーナーに同書を陳列する。本店店売部主任の富澤昭子さんは「長崎出身のタレントで声優の古川小百合さんが長崎の魅力を網羅した『長崎あるある』(TOブックス刊)というコミカルな本を3月に出版したばかりで時期もほぼ同じ。昨年9月に出版された『長崎の法則』(泰文堂刊)などとともに長崎を知る面白くて楽しい本がまた一つ増えた。ボリュームがある割には価格が手ごろだが発行部数が限られている。ぜひ郷土コーナーで現物を見てほしい」とほほ笑む。

 解散した編さん委員会に代わって問い合わせの窓口を務める長崎市統計課係長の吉冨修さんは「全4巻の新長崎市史は一般の人が気軽に読むにはあまりにも内容が詳細で膨大なボリューム。長崎を知る入門書として多くの人たちに活用してもらえれば」と呼び掛ける。

 B5版、265ページ。価格は900円(税別)。限定2000部発行。長崎市内の主な書店で取り扱う。

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