長崎の老舗菓子店「萬順製菓」(長崎市諏訪町)は4月16日、眼鏡橋前店(諏訪町)をオープンした。
創業家は江戸時代、砂糖の貿易商を営んでおり、1884(明治17)年に新地(現在の中華街かいわい)で製菓業を創業。同社のメーン商品「よりより」は、一つ一つ手でねじって作るらせん状の揚げ菓子で、形状が「もろい麻の花」に似ていることから「脆麻花(マーファ)」と呼ばれる中国の伝統菓子。現在では長崎名物の菓子として広く知られている。
同社によると、新地はもともと唐人居留地や荷揚げ場としてのエリアであったため、出島と同じく一般人は自由に出入りできない場所だった。第二次大戦前まで「よりより」の取引はエリア内だけに限られており、特に不自由が生じなかったことから呼び名は統一されていなかったという。
戦後になり、一般の人たちも食べるようになってから口コミで評判が広がったが、「脆麻花」の読み方が分からず「ねじり菓子」「唐人巻き」「南京巻き」「よれよれ」「よりより」など任意に呼んでいたものを、1955(昭和30)年ごろに当時の社長が「よりより」に統一した。その後、同社には登録商標化の助言が多数寄せられたが「制限すれば(長崎の)名物になりきることができない。歴史と味で消費者から選ばれるような菓子作りをしたい」という理由で商標登録は行わなかった。
眼鏡橋前店は眼鏡橋近くの道路沿いに位置。スタッフの貝原佑美さんは「開店してまだ1週間たっていないが、観光客の来店が多い。中には熱心に店の写真を撮っていく人もいる」とほほ笑む。
同店の主力商品「ちより」(税別500円)の商品名は「小さな、よりより」に由来する。小さな「よりより」を詰めた小袋2個が入っており、正方形のパッケージデザインは長崎の春夏秋冬と五島をイメージした5種類をラインアップする。「ランタンフェスティバルの出店では、眼鏡橋とランタンをイメージした冬バージョンがとても人気が高かった。小さなカステラをラスクにした『カステララスク』(税別400円)も特に女性客に人気がある」とも。
オープン記念として「カメをかたどった月餅(げっぺい)」を購入者に進呈する(無くなり次第終了)。
営業時間は9時~19時。