長崎で「エスペラントの日」にエスペラント初心者講習会 ラジオ公開録音も

小冊子「エスペラントへの招待」を手にする大江由紀さん

小冊子「エスペラントへの招待」を手にする大江由紀さん

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 コワーキングスペース「ツナグバサンカク」(長崎市上町、TEL 095-800-1085)で6月12日、今から130年ほど前に作られた人工言語・エスペラントの初心者講習会「エスペラント超入門講座」が開かれる。

ザメンホフの著書とゴーゴリ原作の訳書「検察官」

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 エスペラント(エスペラント語)は1887年、ロシア帝国領ビヤウィストック(現ポーランド国内)に住むユダヤ人眼科医・ラザロ・ルドビーコ・ザメンホフ(当時27歳)が発表した人工言語。

 周辺国との紛争に明け暮れる地域に生まれ、近隣の人たちが互いに言葉が通じないことで長年いがみ合う環境で育ち、ユダヤ人であるために迫害され続けてきたザメンホフ少年は、幼い妹サラの死などをきっかけに「どうしたらみんなが仲良くなれるのだろう」と考えてきた。13歳のころ、「母国語のほかに、みんなが共通する言語を持てば争いがなくなるかもしれない」と考えて国際共通語の開発に着手。1878年、高校(ギムナジウム)の最上級生(当時19歳)の時にようやくエスペラントの原案を完成させる。

 最初に作った詩は「民族と民族が敵する心よ、消えよ、失せよ、時は来たのだ。全ての人が家族のように心一つになる時が」と書かれている。その後、詩やエッセーを書いたり、ロシアの作家・ゴーリキの「検察官」などの著名な作品を訳したりしながら、原案にさまざまな改良を加えた。原案完成から9年後の1887年、実際に使えることを確認したザメンホフは、「国際語」という40ページの小冊子を教科書として自費出版した。その際にザメンホフが「エスペラント博士」というペンネームを使ったことから、言語そのものを「エスペラント(希望する人)」と呼ぶようになった。エスペラントはその後、いろいろなルートで世界中に広まりザメンホフの名前も知れ渡る。1917(大正6)年、ザメンホフは最後まで貧しい人たちの治療に専念する「親切な眼医者さん」としてドイツ軍占領下のワルシャワで生涯を終えた。享年58歳。

 日本で最初に行われたエスペラントの授業は1896(明治29)年、海星学校(現・海星高校、東山手町)に化学の教師として赴任したフランス人宣教師・ミスレルが生徒60人ほどを集めて行った4日~5日にわたる授業と言われている。1902(明治35)年、ミスレルは居留地に住む外国人向け英字新聞「ナガサキ・プレス」11月26日号にエスペラントに関する記事を掲載。これがエスペラントについて最初の報道となった。記事を読んだ東京帝国大学助教授(当時)の歴史学者・黒板勝美が1906(明治39)年6月12日に「日本エスペラント協会」を設立。作家の二葉亭四迷が国内初のエスペラント教科書「世界語」を出版した。同会はその後、「日本エスペラント学会」への改組などを経て現在、一般財団法人・日本エスペラント協会(略称JEI)として活動を続けている。

 同会が設立された「エスペラントの日」に当たる6月12日、0歳~12歳の子どもたちの活動支援組織「ながさkids」代表の大江由紀さんは、「エスペラントを知らない人たちに存在を知らせる活動をしたい」と同イベントを発案。自身がパーソナリティーを務めるラジオ番組「ながさキッズ通信」(6月3日スタート、毎週水曜19時~。長崎市民エフエム放送)の番組内にエスペラントコーナーを設け、ザメンホフの伝記「武器では地球を救えない」(和田登著、文渓堂刊)を1章ずつ朗読している。

 「エスペラントの存在を知ったのは5月の半ば。朗読の中でザメンホフが目指す『何とかして争いのない世の中を作ろう』という思いに触れて感極まった」と目を潤ませる。

 「学び始めたばかりだが、文法がわずか16項目しかなく、しかも英語のような例外が一切ないのが面白い。名詞は(o)、形容詞は(a)、副詞は必ず(e)で終わる。動詞の現在形は(as)、過去形は(is)、未来形は(os)。発音もローマ字読みでそのまま読む。子どもたちにもぜひ教えたい」と力を込める。中学程度の英語力があれば、1日である程度使えるようになるという。

 同講座の講師を務める盛脇保昌さんは1976(昭和51)年、三菱重工長崎造船所への就職と同時に長崎エスペラント会に入会。入会から現在まで、一貫してエスペラントの普及に積極的に関わってきた。2003年3月、「県立長崎図書館(立山1)に1902年のナガサキ・プレスに掲載されたミスレルの記事があるのではないか」という情報を知り、同会会員の西宣子さんとともに探し始めた盛脇さん。同館に所蔵されている「ナガサキ・プレス」のマイクロフィルムを一枚一枚丹念に調べる作業を手分けして根気強く続けた。同年4月20日、土日だけしか作業ができない悪条件ながら小さな記事がようやく見つかり、その発見は日本のエスペラント運動の流れを知る大きな手掛かりとなった。そのほか県立図書館にはザメンホフが書いた当時のエスペラント著書20冊ほど(ほとんどが禁帯出)が外国語図書の倉庫に保存されている。

 大江さんは「昔は長崎郵便局でも大勢の配達員さんを集めてエスペラント講習会を開いたり、長崎で全国大会が大々的に開かれたりしたらしい。講習会の様子は公開録音して次週のラジオ番組内で紹介する予定。少しでも興味あれば、ぜひ参加してほしい」と呼び掛ける。

 開催時間は17時~18時30分。参加費は500円。定員20人。

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