イオン東長崎店(長崎市田中町)近くに8月20日、古着店「Good Staff」が中里町から移転オープンした。
店主の金子智美さんが2年半ほど前から長崎市中里町の国道34号線沿いで「ひっそりと」営んでいた同店。特に何も宣伝はしなかったが、口コミだけで福岡や関東方面から訪れる客が少なくなかったという。「古着店というより『よろず相談所』。若者から高齢者まで、いろいろな人がひっきりなしに話をしに来た」と金子さん。
店名の「グッド・スタッフ」の本来のつづりは「Good Stuff」。「この服、いいね」「気に入ったよ」などの意味で用いられる英会話の常套句で、「良いスタッフ」という意味はない。ところが、訪れる多くの人から「つづりが間違っている。UじゃなくてAだよ」と指摘され続けた結果、いちいち説明するのが面倒になり「Good Staff」に看板を作り変えた。
「多くの人から『良いスタッフって、いい名前ですね。ここの雰囲気にぴったり』と言われるが、気が弱いのであえて否定しない」とほほ笑む金子さん。「でも、店内はずっと『Good Stuff』を貫いている」とも。
9月、40代で孫が生まれたばかりの金子さんは20歳で結婚。21歳で子宝に恵まれるが、突然病魔に襲われて入退院を繰り返す生活が20年以上続き、多くの金が治療費に消えた。最も貧しかった時期は数百円程度の子どもの古着さえ買うことができなかったという。
「当時、『見るだけ』のために子連れで通った古着店がある。そこの女性が嫌な顔一つ見せず、いつも温かく迎えてくれたことが一番の救い。私が『古着』に強くこだわる原点がそこにある」と振り返る。38歳の時、「残りの人生は自分がやりたいことをやる」と一念発起して中里町に古着店を開いた。
「古着だけで子どもたちを育てた。新品は下着と靴下しか買ってやれなかった。今年20歳になる息子から『新品の靴下がとてもうれしかったことが一番の思い出』と言われた時は声が出なかった。私にとっての古着は単なる古い服ではなく、あの古着店の女性のように温かく包んでくれる『母親』のような存在。私の状況を察してくれた女性を思い出すと今でも泣きそうになる。今度は私がそんな人たちのための場所を提供したい」と力を込める。
同店は2年前まで「卵販売所」として利用されていた建物を、金子さんが自分たちで改装したもの。移転先を探していて、偶然見つけたという。「紹介した不動産屋さんも『ここで古着店は無理』と断言するほど。床は抜け落ち、土壁が壊れていた」と振り返る。
建物所有者の許可を得て、電気工事業を営む夫と2人で何日もかけて内装を仕上げた。金子さんは「夫が電気工事のプロなので助かった。古着には全く興味がない人で『何がいいのか、さっぱり分からん』と首をかしげるが、いつも優しく支えてくれる。この人がいなかったら、今の自分はなかった」と話す。
店内ではジーパンやジージャン、子どもの古着など幅広いジャンルの古着を取り扱う。かなり使い込まれた古いブーツなど、マニアックなアイテムもあり、古いおもちゃや、小物入れなどのほか、ちょっとしたアクセサリーも並ぶ。「ディスプレー用に置いていた古い文机を、どうしても売って欲しいと乞われて売ったこともある。この適当な性格がいいのか、悪いのか分からないが、気が合う常連さんたちに支えられて今がある。人は毎日を大切に一生懸命生きれば、それでいいと思う」と金子さん。
営業時間は10時~18時。月曜定休。