出島交流会館(長崎市出島町)で2月8日、女性起業家に向けた「SNS活用販売戦略セミナー」が開かれた。
講師の竹下幸也さんは農林水産省「6次産業化サポートセンター」に登録された専門家「6次産業化プランナー」。6次産業化とは農林水産業などの第1次産業が、食品加工(第2次産業)や流通販売(第3次産業)まで手掛ける多角化経営を指す。竹下さんは大手企業で販売戦略を担当するなど民間でのさまざまな実績を生かし、売り上げに悩む経営者自身が実践しながら事業拡大する方法を指導する「竹下塾」(東京都)を主宰。独立行政法人中小企業基盤整備機構の経営実務支援アドバイザーも務める。
セミナーには店舗経営者など女性起業家12人が参加。冒頭、竹下さんは「現代はICT社会であり、ユーチューブとSNSを掛け合わせれば自身で販路拡大できる。それができなければ非常に厳しい」と呼び掛け、塾生の支援結果を引用しながら講義を進めた。
ICTとはInformation and Communication Technologyの略称で、日本で一般に定着している「IT」(情報技術)に通信コミュニケーション能力の重要性を加味する概念。海外では「IT」よりも「ICT」の方が一般的という。
竹下さんは「スマートフォンやSNSは技術の進歩がもたらした便利な道具だが、最終的には人間同士のコミュニケーションの問題」と説明。廃業寸前で落ち込んでいた農業経営者や漁業経営者が、ユーチューブを通じて「元気なキャラクター」に変身していく動画を次々に紹介した。「対馬真心水産」の早田真路さんが軽快にあいさつする様子を見た受講生らは爆笑。中にはうなずきながらメモを取る人もいた。
「逆説的だが地元の顧客に来てほしいなら、中央(関東圏)を狙う方が早い。再生回数に一喜一憂することなく、誰に何を伝えるかが大切」と竹下さん。新しい情報に弱い地元の人たちに、関東圏に住む知人らから「近くにこんな人がいる」という情報が「逆輸入」される現象を話すと、受講生の中から「それ、分かる」という声も。
後半は受講生らがそれぞれ班に分かれ、実際にスマホを使って動画を作成。撮影中の様子や出来上がった動画を見ながら、互いに気づいたところなどを話し合った。整体院を営む女性は「編集していない1分ほどの動画に、あれほど引き込まれるとは思わなかった。初歩的な質問にも丁寧に答えていただき助かった。手作りのホームページから新規来院になる流れがやっと出来たばかりなので、ぜひ参考にしたい」とほほ笑む。
終了後、受講生らは長崎市にしか生息しない柑橘系果実「ゆうこう」を使って開発されたラーメン「長崎麺紀行」のモニター試食品を受け取った。同商品は平成27年度の県地域産品商品力強化支援事業の支援を受けている。
約3時間のセミナーを終えた竹下さんは「最大の魅力は、かなり高額だったツールが今では全部無料で使えること。私は塾生の指導をしているが、さまざまな情報が自分で手に入る情報化時代。必要な人は、悩んでいないで今日から始めてほしい」と力を込める。