ギャラリーかぜ(長崎市西山2)は7月、長崎の切り絵作家の作品紹介サイト「山下南風美術館」で作品のインターネット通販を開始した。
故・山下南風さんは1917(大正6)年、長崎市西小島生まれ。16歳で京都に遊学し、画家・青山静山に師事。日本画を学ぶと同時に筑摩季三の工房で友禅染めの仕事に従事し、日本画を生かした染色の修業を行った。1954(昭和29)年から1965(昭和40)年まで県立女子短期大学の講師を勤め、昭和天皇の長崎行幸の際に県が献上した「行幸アルバム」の皮表紙制作や、オランダのベアトリックス女王に献上した洋風二曲屏風の制作などを手掛けた。長崎県美術展覧会(県美)審査員も務めている。
独特の図柄は1971(昭和46)年ごろ、染色の調査のためヨーロッパを旅行した際にヒントを得たもの。長崎の歴史、風俗、町並みを描いた郷土色豊かな作品が多い。南風さんはオランダ船やカピタンなど長崎らしい切り絵図柄を考案し、伝統的な染色技法を使って作品を仕上げた。切り絵作品の制作には版画技法の一種・合羽摺(かっぱずり)を応用。合羽摺は強い耐水性の紙を用いてデザインしたものを切り抜いて版にし、和紙などに乗せた上から絵の具を塗って模様を摺り出す技法。江戸時代に京都などで盛んになり幕末まで制作されたという。1978(昭和53)年、切り絵作家の故・滝平二郎さんらと「日本切り絵協会」を設立。常任理事を務め、亡くなるまで切り絵の普及運動に奔走した。1995(平成7)年没。
店主でサイト運営者の福田隆一さんは南風さんの次男。父親の作品を管理しながら同店を運営する。昨年9月から始めたトートバッグ14点、ポストカード(5枚組)6点の通販に加え、作品の通販も開始。購入しやすいようにサイトも一新した。
販売する作品は、はがきサイズの小さなものから一辺が70センチを超える作品まで、「合羽版画」47点、「型染」8点、「切り絵」8点。価格は1万5,000円~80万円(以上税別)と幅広い。
福田さんは「父が心血を注いだ作品を少しでも多くの人に知ってもらいたい。価値を分かっていただける人にお届けできればうれしい」とほほ笑む。