文房具専門店・石丸文行堂(長崎市浜町)6階イベントホールで4月28日、総額1,000万円以上の万年筆を一堂に公開する「万年筆コレクション2017」が始まる。
1883(明治16)年3月の創業から今年で134年の歴史を持つ同店。1982(昭和57)年7月に299人が犠牲となった長崎大水害では、店舗が浸水して甚大な被害を受けたが、従業員は全員無事だった。翌年には地下1階、地上6階建ての現在の店舗が完成。文房具と関連商品だけでビル1棟の売り場面積を誇る専門店は全国でも珍しいという。
「文房具を通じて豊かさと楽しさを」を合言葉に掲げる同店は、初めて万年筆に触れる人向けの体験講座や、書きにくくなった万年筆を対象とした無料のペンドクタークリニック、国内最多色数のオリジナルカラーインクの開発など、万年筆の販売だけにとどまらず万年筆文化の普及に努めてきた。
石丸忠直専務は「今、メーカーの生産が追い付かないほど万年筆ブームが来ている。未経験者からコレクターまで万年筆をとことん楽しんでもらえる入場無料のイベントを企画した」と話す。石丸専務によると、生産終了から80年ぶりに復活する幻の万年筆「チェルヴィニア」の先行試筆受注会が今回の目玉。「東京や大阪に先駆けた国内初の試み」と説明する。
チェルヴィニアは1930年代のイタリアで一世を風靡(ふうび)した高級万年筆ブランドで、第2次世界大戦中に創業地トリノが集中的な空爆を受けたために廃業した。
2014年、チェルヴィニア創業者のおいで万年筆専門店を受け継いだジョヴァンニ・ボリオーネさんが、同店の地下室で幻の万年筆を発見。「ナチス親衛隊の検閲を逃れるため、地下室に隠した」と、幼い頃に叔父から聞いた通りの場所で発見したという。同年、元俳優で万年筆収集家のマウリッツィオ・バスキーさんとボリオーネさんが出会い「チェルヴィニア復活プロジェクト」が始動。バスキーさんは1950年代に廃業した万年筆のペン先メーカー「Globus社」の商標権と同社が保有する工作機械を、2013年に買い取ったばかりだったという。
ほかにも、ペンクリニックや筆圧測定診断(以上、無料)、万年筆組み立てワークショップや万年筆セミナー(以上、有料)のほか、最高額は1本200万円の万年筆展示即売会が行われる。
開催時間は10時~20時。5月7日まで。