長崎在住の脳性まひを患う女性詩人が作詞家デビュー 作曲は伊藤銀次さん

平田さんにCDを渡し、手作りのブレスレットを喜ぶ伊藤さん

平田さんにCDを渡し、手作りのブレスレットを喜ぶ伊藤さん

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 長崎市内の病院で40年以上入院生活を送る脳性まひの詩人・平田喜久代さんが10月25日、歌手で作曲家の伊藤銀次さんが手掛けた新曲「虹」で作詞家としてデビューした。

天草行き高速船の前で記念撮影に応じる伊藤さん

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 同日リリースされた伊藤さんのデビュー45周年記念アルバム「MAGIC TIME」に収録された「虹」は、平田さんの詩集「きくちゃんの詩(うた)」に掲載されている同名の詩が原作。平田さんは言語障がいや四肢にまひがあり、2003年に気管切開して以来かすかな声しか出せない状態にもかかわらず、実妹で看護師の山口まゆみさんのサポートで詩作を続けている。2011年1月に長崎特別支援学校に入学し、50代にして生まれて初めて小学生になった。当時の担任で、現在は布ナプキン専門店「りぼん」(長崎市万屋町)を経営する大原万里亜さんの勧めで2012年8月に詩集「きくちゃんの詩(うた)」を刊行すると口コミで全国に評判が広がり、2013年4月に女優の大地真央さんがテレビ番組で朗読するなど大きな反響を呼んだ。

 伊藤さんは1950(昭和25)年大阪府生まれ。1976(昭和51)年に故・大瀧詠一さん、山下達郎さんらと「NIAGARA TRIANGLE Vol.1」を発表。佐野元春さんやウルフルズなどの音楽プロデューサーを務めたほか、沢田研二さん、小柳ルミ子さん、アン・ルイスさん、荻野目洋子さんなど数多くのアーティストに楽曲を提供している。2014年3月に放送終了したバラエティー番組「笑っていいとも」のテーマ曲「ウキウキWatching」の作曲者としても知られる。

 伊藤さんによると、大原さんの招きでライブを開催した2013年の秋に「きくちゃんの詩」に出合ったという。「読んでいるそばから次々にメロディーが頭の中に浮かんできた。東京に持ち帰って作曲を始めたら、一気に9曲も出来上がった」と振り返る。

 伊藤さんは11月18日、今年末で閉店するライブハウス「オハナカフェ」(浜町)でライブを開き、「虹」も披露した。翌朝、新アルバムを手渡すため病室を訪れた伊藤さんを平田さんは笑顔で迎えた。同行した大原さんが耳元で「虹」を再生すると、平田さんはうれしそうに体を揺らした。妹のまゆみさんが平田さんの手を取って一緒に手作りしたブレスレットを返礼として手渡すと、伊藤さんは左手首にブレスレットを着け、うれしそうに「ありがとう」と礼を言った。

 伊藤さんは「詩集は、とても感性豊かな作品ばかり。すでに全部の詩に作曲しているので、いつか全部まとめて発表できれば」と話す。大原さんは「とてもすてきな曲。『みんなのうた』に選ばれるのが夢」とほほ笑む。

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