時津町で通称「鯖くさらかし岩」と呼ばれる巨石、継石坊主を町おこしに活用しようという取り組みが行われている。時津町民総活躍プロジェクト推進委員会が中心となって行っている活動などを紹介するウェブサイトも11月1日に公開された。
「鯖爛巌(さばくさらいわ)」の挿絵 長崎名勝図絵(長崎文献社発行)
「継石坊主」は、同町の入り口に位置する井手園交差点のそばにある突き出た岩の上に、大きな岩が乗りバランスを保ちながらそびえ立つ坊主のような天然の奇岩で、「鯖くさらかし岩」として同町のシンボルとしても親しまれてきた。鯖くさらかし岩とは長崎の方言で「鯖を腐れさせる岩」という意味を指す。
古くは俳人・魯山人の句にも詠まれ、1975(昭和50)年~1994年にかけてTBS系列で放送されたテレビアニメ「まんが日本昔ばなし」にも「鯖くされ石」として紹介されている。アニメの原作として同町の郷土史が記された書籍「ふるさと散歩 とぎつ」にも、大村湾の魚を捕る漁師から魚を仕入れて売っていたある魚売りが、長崎に行けば南蛮船から見たこともない珍しい品を買うことができると聞きつけ魚を売りに行こうとしたところ、継石坊主が落ちるだろうからと終日待ちつくし、とうとう魚を腐らせてしまったという話が記されている。近年ではテレビ朝日のバラエティ番組「ナニコレ珍百景」でも紹介されている。
サイトでは継石坊主を「どがんしても落ちな岩」として紹介。「どがんしても」は長崎弁で「どうやっても」もの意味で、「さば売りこぞうのぎん太」や大岩の守り神など現代風にアレンジされたキャラクターと共にストーリーを紹介するアニメを順次公開している。
継石坊主が「落ちそうで落ちない」ことにあやかったテーマソングも公開し、オリジナルダンス動画も製作しているという。
推進委員会の声掛けを行い、事務局の一人として参加している同町役場企画財政課長・大宅啓史さんは「近年、長崎市のベッドタウンとして開発が進んだことで町外から多くの方が移住してきているが、町民でも鯖くさらかし岩について知らない人が多い。約2年前から温めてきた企画で、この取り組みをきっかけにまずは地元の人に住んでいる町のことに興味を持つきっかけとなり、地域にある資産を観光に生かしていければ」と話す。
取り組みに合わせて奇岩の御利益を受験に生かしてもらおうと、さば売りこぞうのぎん太と継石坊主と一緒に記念撮影が楽しめる等身大パネルも制作したほか、商品としてトートバッグ(1,620円)、合格マスキングテープ(432円)、合格手拭い(864円)、波佐見焼合格マグカップ(1,944円)など、合格祈岩グッズを企画。商品はTSUTAYA 遊ING時津店やイオン時津店、レストランさきのエリア21、時津アンテナショップBRIDGEなどで販売するほか、順次取り扱いを広げるという。
サイトやグッズの制作に携わるトータルプロデュースを行っているart.One社長の一ノ瀬卓さんは「地域の人が参加する形での町おこしができればと思い協力させてもらっている。受験生に向けてグッズの企画など進めているものもまだあるので楽しみにしていてほしい」と意気込む。