南陽小学校(長崎市竿浦町)で7月17日、地元の海の現状や課題、水産業の特色について理解し関心を深めてもらうキッズスクール「Sea級グルメスタジアムin長崎」が行われ、鶴洋高校の生徒が6年生2クラス約60人に向けて出前授業を行った。
「次世代へ海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる」ことを目的に日本財団が取り組む「海と日本プロジェクト」の一環として行われた同イベント。プロジェクトは2018(平成30)年に全国水産高等学校長協会と地元テレビ局が協力して福島県、愛媛県、山口県の3県からスタート。2019年には7県、2020年には長崎県を含む13県にまで拡大している。地元の水産資源の現状や課題を高校生が授業し、実際に体験してもらうことで地元の海について考えてもらうきっかけづくりを行い、学んだことを生かしてオリジナル商品開発に挑戦してもらう取り組みを行っている。
授業を行った鶴洋高校水産科3年の浦田綾菜さんら7人は「長崎の海は対馬海流の影響を受ける絶好の漁場。漁獲できる魚種は300種類以上と全国1位」と説明し、長崎の海の魅力を伝えた。その一方、温暖化の影響で海水温が上昇。多くの魚を育む藻場が消失すると同時にサンゴが増えていることに触れ、「サンゴ礁が増えていると聞くと良いイメージかもしれないが、サンゴはもともと熱帯の海に生息する。海の問題といえば海洋プラスチック問題がまず浮かぶかもしれないが、海の熱帯化によって水産資源が失われつつあるという問題も知ってほしい」と訴えた。
次に長崎県で取れる水産物の一例として浦田さんらが課題研究に取り組む「いりこ」について紹介。児童らに試食用のいりこが配られるとあちらこちらで「おいしい」「くせになる味」と歓声が上がった。
浦田さんが所属する水産科海洋開発類型(食品)専攻では、生徒17人が1年ほど前から課題研究として地元企業の協力の下、いりこを使った料理や商品開発を開始。浦田さんは「いりこというとだしやおつまみのイメージが強い。料理にするとさまざまな味に溶け込んでいりこ本来の味が分からなくなってしまうことから、粉末いりこを使ったラスクにたどり着いた」と話す。いりこの風味を生かしながら香ばしい磯の香り漂うアオサ味と優しい甘みのきび砂糖味に仕上げた。ラスクを口にした児童らからは自然と笑みがこぼれ、浦田さんの「どちらの味が好きですか」という質問に「僕はきび砂糖」「私はアオサ」と元気よく返した。
休憩時間にはいりこの原料となるイワシ漁で取れるさまざまな魚を展示し、間近に触れる機会が設けられた。児童らは瓶に入ったさまざまな魚の干物を手に興味津々の様子で、あちらこちらから笑い声が上がった。
授業では小学生らと商品開発を行う予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けてプログラムの一部を変更。浦田さんらが作ったラスクのネーミングやチラシのデザインを一緒に考え、グループごとに記念撮影を行い、最後に土産用のいりこをプレゼントして終了となった。
授業を受けた児童からは「地元の海に興味を持つきっかけになった」という感想や「いりこを食べたのは久しぶりだった。改めてそのおいしさに気付いた」という声があった。
8月20日にはメインイベントとなる2回目の講座が開かれ、集大成として商品名が決まる。