出島メッセ長崎(長崎市尾上町)内のトイレが12月12日、2021年度「グッドトイレ選奨」で一般投票特別奨を受賞した。
「人にやさしいトイレ、持続可能な環境形成」を求める「トイレ道」を説く日本トイレ協会が毎年、発表している同賞。同協会は、トイレが一生に20万回も使うといわれる施設で人が集まる所にはよく必要となることから、「目指すべき日本のいいトイレ」を探求してきたという。同賞では、トイレ文化活動や環境の創造に対して活動した当事者をたたえ、「トイレ道」についてさらなる深化の醸成を目指すという。
同賞では、一般投票と審査委員会による最終選考の2段階で「グッドトイレ」としてふさわしいトイレを選定。今年は22作品の応募があり、一般投票で特に投票が多かったことから同施設を所有する長崎市と整備・運営するながさきMICE(平野町)、設計施工した日建設計(東京都千代田区)に一般投票特別奨が贈られた。
受賞した同トイレのコンセプトは、「人、街、文化を紡(つむ)ぐ長崎らしい“おもてなし”トイレ」。 トイレの基準提案やマナーアップに取り組む市民団体「みんなにやさしいトイレ会議実行委員会(長崎市、竹中晴美委員長)」が設計協議に参加したことで、細やかな配慮が施されたトイレが実現したという。
入り口付近には、「みんなのトイレ」と名付けた多目的トイレを設置。一般用トイレの手前側には高齢者が気兼ねなく利用できるようにシルバーマークを表示している。オストメイト(=人工肛門)対応の設備だけでなく、自己導尿利用者向けの前広便座を設置したブースも用意。利用者に配慮して利用者のみが分かりやすいサインを掲出している。
トイレブースには長崎伝統の「ハタ」をモチーフにドアの開閉と連動する在室サインを採用。イベントによって男女比が偏ることもあることからトイレの混雑を軽減するため男子トイレ奥部に仕切りと男女トイレをまたぐ廊下とを設置することで、イベントに応じて男女比が変更できるよう工夫も凝らしている。
手洗場付近には、男女トイレとも全身鏡を設置。女子トイレには椅子をなくし、化粧直しの動作に配慮して高めのカウンターを設けたパウダーコーナーを用意するなど、気配りが行き届いたトイレを目指した。
今年3月にリニューアルした天主公園(平和町)など12施設でトイレの基準提案を手掛けてきた竹中委員長は「出島メッセ長崎のように多くの人が集まるMICE施設はさまざまな事情を抱えた人も多く来る場所。特別な便器などを備え利用者に分かりやすくするだけでなく、事情を知られたくない人への配慮も行き届いたトイレが本当の優しさでありおもてなしにつながるのではないか」と力を込め、受賞については、「今年は例年以上に多くの作品がノミネートされた中での受賞には驚いた。一般投票で多くの票が集まったのは利用者に寄り添う優しさがあっただけではなく、長崎らしさが表現されていた結果ではないか」と喜んでいた。