ノーベル賞作家で長崎市名誉市民のカズオ・イシグロさんが脚本を務めた最新作「生きる LIVING」の試写会が3月28日、TOHOシネマズ長崎(長崎市茂里町)で行われる。主催は長崎市。
長崎市出身の日系イギリス人小説家のイシグロさんは幼少期を長崎で過ごし、1960(昭和35)年に父が英国立海洋研究所の所長から招かれたことがきっかけで渡英。1982(昭和57)年に戦後間もない長崎市を舞台とした長編小説「遠い山なみの光」で本格的にデビュー。2017(平成29)年にノーベル文学賞を受賞したことを受け、翌年7月に長崎市名誉市民となった。
黒澤明監督作品「生きる」(1952年)を原作にイシグロさんがリリメークした同作。若かりし日に黒澤作品に衝撃を受け、映画の持つメッセージ性や黒澤監督の「何事も手柄が得られるからやるのではない。世間から称賛されるからやるのではなく、それが自分の成すべき事だからやる」という人生観に魅力を感じてきたというイシグロさん。「オリジナルの高い評価に怯えることなく、長年抱いてきた戦前・戦後のイギリス文化への憧れを支えに、自分なりの英語の脚本を書いた」という。
3月31日公開の同作はビル・ナイさんを主演に、オリヴァー・ハーマナスさんを監督に迎え、第二次大戦後のロンドンを舞台にがんで余命半年を宣告された主人公が人生を見つめ直し、新しい一歩を踏み出すストーリーを描く。
試写会は今年1月に同作が第95回アカデミー賞・脚色賞にノミネートされたことを受け、名誉市民であるイシグロさんの顕彰とシビックプライドの醸成を目指して市が企画した。アカデミー賞は3月13日に発表される。長崎市広報広聴課の坂本篤洋さんは「作品を通じて長崎にゆかりのあるイシグロさんのことを知るきっかけにしてもらえれば」と参加を呼びかける。
市は試写会に180人を無料招待する。応募は長崎市在住者または市内に通勤・通学している人が対象。市ホームページなどで受け付ける。3月14日締め切り。