難病の子どもやその家族が宿泊できる「十八親和ペンギンハウス」(長崎市坂本1)が5月2日、十八親和銀行大学病院前支店跡に開所した。
2020年10月に旧十八銀行と旧親和銀行が合併し十八親和銀行(銅座町)となったことを受け、翌年5月から1年ほどをかけて店舗統合を進めていた同行。廃止となった43店舗の跡を地域貢献できる活用に向けて模索していた。
県内で高度医療を必要とする子どもの多くは長崎大学病院(坂本1)に通院や入院して治療を受けることが多い。離島が多く南北に広い長崎県では交通の便が悪く、子どもたちや家族にとって肉体的にも精神的にも負担が大きいことから病院近くで手軽に宿泊できる施設が求められていた。これまでボランティア団体「ペンギンの会」が上西山町で空き家を活用して運営していた「ペンギンハウス」があったが同院から距離があり利便性などの問題があった。
1992(平成4)年に建てられたレンガ造りの洋館風2階建ての旧支店は、被ばく遺構になっている山王神社の片足鳥居のすぐそばにあることから、同神社に続く道側に駐車場を配置するなど景観にも配慮した店舗として親しまれていた。
同行が同支店跡を無償で改装した同施設は、同団体が昨年12月に新たに設立した一般社団法人「長崎ペンギンの会」(坂本1)に無償で貸し出す形で運営。施設名は極寒の中、家族で子育てに励むコウテイペンギンに由来することから、ペンギンのモニュメントが出迎える明るいエントランスとなっている。山王神社にある2本の被ばくクスノキにあやかり、支援への感謝を伝える「感謝のクスノキ」を施設のシンボルとして設置した。同行の山川信彦頭取は「病気をしっかり克服し、子どもたちがここから巣立っていく施設になれば」と期待を込める。
1階に車いす対応ユニットバスを備えバリアフリー対応の洋室1室、2階に和室と洋室各2部屋の5部屋を用意。共有のキッチンや食堂、ランドリーなどを備える。同団体の野添恭士代表は「施設を提供してもらえることは今でも夢のよう。第二のわが家として難病の子どもたちや家族が自宅と同じようにくつろいでもらえる空間を目指したい」と意気込む。
同団体の顧問を務める長崎大学病院小児科の森内浩幸教授は「病院は医療スタッフが尽力していても子どもたちにとってはつらい治療を強いる場所。長い入院生活では心身共にストレスが加わるので、病院のそばで子どもたちや家族がリフレッシュできる場があると大きな支えになる。病院のそばにあることで医師の支援も受けやすくなる」と話す。
料金は1日1室1,000円。施設は同会にメールまたは電話で予約することで利用できる。併せて、同施設の運営をサポートするボランティアも募集している。