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長崎大経済学部で「アダム・スミス展」 生誕300周年で企画

アダム・スミス展の様子

アダム・スミス展の様子

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 長崎大学経済学部(長崎市片淵4)にある同大付属図書館経済学部分館で6月1日、「アダム・スミス展-生誕300周年記念展示-」が始まった。

アダム・スミスの著書「国富論」の初版(1776年刊)

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 アダム・スミスはスコットランド生まれのイギリスの経済学者であり思想家。産業革命真っただ中の1776年に発表した「国富論」で体系化した自由主義経済理論を打ち出し、需要と供給の関係によって価格が自動的に決まる市場原理である、いわゆる「見えざる手」によって価格はおのずと調整されるという考え方から国家の規制や介入を排除し、市場原理に任せた経済政策を主張。古典派経済学の礎を築いたことから「経済学の父」と呼ばれている。

 同大経済学部の前身校「長崎高等商業学校」は東京高商(一橋大)、神戸高商(神戸大)に次ぐ第三高商として1905(明治38)年3月に設立。経済史や経済学史については当時、最先端の研究が行われていた同校。1907(明治40)年から教授を務めた武藤長蔵名誉教授は資料探求を核とする厳格な研究姿勢とその成果から「ムトウイズム」と呼ばれ、芥川龍之介や斎藤茂吉といった文化人らとも交友があった。社会経済史学会の設立など、学界の枠を超えて幅広く活躍。1944(昭和19)年に長崎経済専門学校への改称を経て、戦後の教育改革で1949(昭和24)年に経済学科、商学科の2学科から成る新制長崎大学経済学部になっていた。武藤名誉教授が収集した数多くの資料・史料は現在、同分館にある「武藤文庫」に所蔵されている。

 100年前のアダム・スミス生誕200周年のときには京都帝国大学など経済学研究に力を入れる各大学で記念行事が行われていたが今回は大きな動きが見受けられないことから、同学部で経済学史研究にも力を入れている南森茂太准教授が「日本の経済学研究の先駆けとして研究に注力していた長崎大学で記念行事を行いたい」と同展示会を企画。100年前の京都帝国大学でも展示された武藤名誉教授所蔵の国富論の初版をはじめ、同校や武藤名誉教授の所蔵していたアダム・スミスの著書など貴重な史料を集めた展示会の開催を決めた。

 6月23日には同大で「アダム・スミスと日本の経済学」をテーマに、南森准教授が講演会を行う。15時~16時30分。参加無料。

 南森准教授は「経済学は私たちにとって身近な学問だが、その歴史は古くない。経済学の誕生は諸説あるが、アダム・スミスの国富論が経済学の発展に寄与したことは確かで、現在でも世界中で読み続けられている」と話し、「展示を通じてアダム・スミスに関心を持てもらうきっかけになれば」と来場を呼びかける。

開館時間は平日9時~20時、土日祝日12時~17時。入館無料。7月31日まで。

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