「とぎつペーロンフェスティバル」が7月16日、時津港で開催された。
51回目を数える同町のペーロン大会。ペーロンは長崎で夏季に行われる伝統的な舟競争。45尺(13.6メートル)ほどの細身の和船に漕手(そうしゅ)24人(地区によっては26人)と舵取りや太鼓打ち、銅鑼打ちなど4人が乗り込み、漕手が前向きに櫂(かい)を構えて太鼓や銅鑼の音に合わせてこぐことで進む。勇壮な姿が印象的な夏の到来を知らせる地域に根ざした伝統行事として毎年各地で大会が催されてきたが、コロナ禍で開催できない状況が続いていた。
4年ぶりとなる今大会では順位を競わず、参加地区の町民同士の親睦を図り、楽しむことを目的に開催。10地区が男女混合のチームで参加し、5地区ずつ2グループに分かれ各2レースが行われた。七工区(時津町西時津郷)の護岸には地区ごとにテントが張られ、応援に駆けつけた観客から選手たちの力強いかいさばきに熱い声援や拍手が送られた。途中、地区の子ども会の協力で体験乗船も行った。
時津町ペーロン協会会長で同町の町議会議員・山脇博さんによると、「コロナ禍の影響に加え、高齢化や過疎化で漕手が集まりにくい地域があることを考慮し、伝統を絶やすことなく続けていくために町民の親睦を図ることに重きを置く形での開催となった」と振り返る。大会では毎年行ってきた順位やタイムによるチームの表彰は行わないものの、個人表彰を用意した。
「友紫会」として同大会に出場した子々川地区では大会後に慰労会が行われ、岳田稔人会長が熱戦を繰り広げた選手らを労った。個人表彰では、岳田さんら2人に長年チームを支えてきた功績をたたえる「大御所賞」を贈ったほか、今年初めて参加した4人に「ルーキー賞」を贈った。
毎年結果が低迷していた中で副キャプテンとしてチームづくりに力を注いできた坪川哲平さんは「少しずつ順位が上向き、結果を残しつつあるなかでコロナ禍を迎えたことは痛手だったが、今年は4人が新たに参加して大会を盛り上げてもらえた。これからもこの地域やチームが好きで『また参加したい』と言ってもらえるチームづくりを大切にしていきたい」と意気込む。炊き出しを行う婦人会のメンバーらも「楽しみながらチームを応援させてもらっている」と笑顔を見せた。
山脇さんは「ペーロンは地域の人々が集まり、一つの目標に向かって結束するきっかけにもなっている。伝統行事としてだけでなく同じ地域に暮らす幅広い世代がつながり、絆を強める大切なイベントとして次世代に受け継いでいきたい」と意気込む。