傾斜市街地を活用した市民農園「さかのうえん中新町ヒルズ」(長崎市中新町)で9月30日、体験交流イベント「さかのうえんフェス」が開催される。
「長崎の都市価値を0ベースで再考し、提案・実践する」ことを目標に平山広孝さんが2010(平成22)年4月に設立した景観まちづくり団体「null長崎都市・景観研究所」が運営する同施設。平山さんによると「長崎独特の密集斜面市街地は高度経済成長期の人口増加に伴い、急激かつ無秩序な開発が行われ、少子高齢化によって持続可能な地域づくりが困難になるなどさまざまな課題を抱えている」という。
平山さんは、斜面市街地の多くが「自然共生区域」として位置づけられ、自然を生かした暮らし方を受容できるエリアとなっていることに着目。2011(平成23)年2月に行われた「若者によるまちづくり提案発表会」で「斜面都市のリ・デザイン」として斜面市街地の空き地を「地域資源」として捉え、地域課題の解決と若者のアクティビティーの開発に向けた取り組みとして、田上富久・前長崎市長に提案していた。
中新町に平山さんの友人が転居したことがきっかけで地域の人とつながり、自治会長に市民農園を作ることを提案したことで実現した取り組みは、2020年5月にオープンした「さかのうえん中新町ベース」からスタート。2021年5月には「さかのうえん中新町ヒルズ」を2メートル×3メートルの区画に分けて半年単位で貸し出す農園をはじめ、「さかのうえん中新町パティオ」、「さかのうえん中新町テラス」と現在は4カ所に拡大。
一般市民向けの貸し農園としてだけでなく、周辺の学校と連携した教育の場としても活用。西山木場地区で「長崎伝統野菜」の保存・育成に取り組む農家の中尾順光さんの協力も得て、周辺住民の暮らしの充実や伝統野菜の継承などに領域を広げ、2021年に長崎市都市景観賞を受けている。
同施設で初開催となるイベントでは里芋の収穫体験や試食、伝統野菜の植え付けなどを体験。中尾さんらをゲストに招いてトークショーを行うほか、交流会も行う。
平山さんは「若者が中新町を訪れて地元の人と交流が生まれ、農業関係者からの協力も得られるなど農園ができて4年でさまざまなことが起こった。初となるイベントでは多くの人に取り組みを知ってもらえれば」と来場を呼びかける。
開催時間は10時~15時。参加無料(交流会のみ参加費3,000円)。体験参加は予約制。予約はホームページで受け付ける。