長崎市を中心に活動する一般社団法人「長崎ライフオブアニマル」(諫早市)が現在、施設拡大や保護数の増加に伴う医療費確保のためクラウドファンディング(CF)で支援を呼びかけている。
同団体代表の木村愛子さんは長崎市中心部の居留地エリア出身。福岡で暮らしていた木村さんは2009(平成21)年に長崎に帰郷し、道路で事故に遭う猫が目についたことから現状を調べたところ、長崎は殺処分が全国でもワーストトップクラスの常連県ということを知った。当時、長崎で猫の保護団体はあったものの、犬に注力する保護団体がなかったことから、「行き場を失う動物たちに全力で手を差し伸べたい」と同年12月、動物愛護団体「長崎ライフオブアニマル」を設立した。
長崎市動物愛護管理センターと協力体制を築き、官民一体となって活動に取り組んできた木村さん。同センターで収容できる犬や猫の数に限りがあり、「保護数が増えすぎると老犬や病気を患った犬が優先的に殺処分されていく状況を目の当たりにした」と振り返る。センターで保護される犬の中には飼い主とはぐれて通報があった迷い犬も多く、殺処分後に飼い主がセンターを訪ねることもあった。木村さんは迷子になった犬の飼い主の捜索に注力し、保護した犬を飼い主の元に戻す活動に注力。飼い犬が迷子になった際の返還率を高めるため、名札の装着や飼い主への啓発活動にも力を入れてきた。
「行き場を失う命を助けたい」とシェルターの設立を目指し、2014(平成26)年4月、「ティアハイム」(長崎市上戸石町)を建設。同年には木村さんの努力が実り、同年に長崎市での犬の殺処分ゼロが実現して以降も10年以上にわたり、記録更新を継続。2015(平成27)年と2017(平成29)年には長崎市市民活動表彰で大賞を受けるなどしている。
2022年12月に「さらにたくさんの犬たちを救いたい」とシェルターからほど近い諫早市飯盛町にドックランなどを併設した第2の拠点「ティアハイムセカンド」を新設。今春、一般社団法人化した。
コロナ禍の行動制限で家にいる時間が増えたことからペットバブルが起きた反動で、飼育放棄や悪徳ブリーダーの廃業に伴う保護が急増。ティアハイムセカンドの新設からこれまでの約1年半だけでも長崎市動物愛護管理センターや飼育放棄などの犬203匹、猫102匹を保護してきた。譲渡会などを通じて新たな飼い主の元で生活をスタートできる犬や猫もいるが、劣悪な環境で病気を患ったり、人への不信感からかみ癖があったりするため一般家庭への譲渡が難しく、終生保護前提で施設に受け入れることも多いことから、保護数はなかなか減らないという。
木村さんは「悪質ブリーダーの廃業に伴う保護など当初の予想をはるかに超えた緊急対応の連続もあり、行き場を失いそうな犬や猫が次々に押し寄せてきている。手を差し伸べ続けることで医療費だけでも膨大になっているが、どんな命も諦めることなく、『命の最後のとりででありたい』という思いからクラウドファンディングへの挑戦を決めた」と振り返る。「動物の問題の根底にあるのは人間の問題で、現状を知ることでいま一度、動物のことを考えるきっかけになれば」とも。
クラウドファンディングの目標金額は800万円。目標金額を達成した場合のみ支援金を受け取ることができる「オール・オア・ナッシング」方式で行う。集まった資金は、保護した犬や猫の医療費などに充てる。クラウドファンディングは8月30日まで。