長崎さくらねこの会(長崎市魚の町)が現在、長崎市の猫殺処分ゼロ継続を目指して譲渡型保護猫シェルターの拡充に向けた準備を進めている。
後ろ足に障害を持つコツブは兄妹のカイと共にシェルターで継続保護を決めた
同会代表の山野順子さんは2017(平成29)年夏、捨てられていた4匹の子猫を救うことができなかったことがきっかけで猫の愛護活動を始めた。2018(平成30)年、任意団体「長崎さくら猫の会」を立ち上げ、不妊去勢後に元の場所に戻し、餌やりやふん尿の清掃を行いながら地域猫として管理する「TNRM」活動をスタート。2022年3月には一般社団法人化し、行政とも協働して飼い主がいない猫の問題に取り組み、依頼を受けて他の地域のTNRや保護して去勢後に人に慣らした上で譲渡する「TNTA」活動にも取り組んできた。
「本来は外に猫がいないのが一番いい状態」という理念の下、地域猫活動に限界を感じた山野さんは「行き場を失う長崎の猫を助けたい」と2023年2月、譲渡型保護猫シェルター「咲く猫 Plus(プラス)」(香焼町)を開設。「不幸な命の蛇口を締めるには現状を変えるしかない」と昨年3月、シェルターの隣に野良猫の避妊去勢クリニック「長崎さくらねこクリニック」(香焼町)を開業した。昨年4月には長崎市のミルクボランティアの第1号の認定を受け、行政と連携した活動もスタート。不妊化を中心にシェルター収容猫の譲渡とミルクボランティアの3本柱で活動を続けてきた。
長崎市動物愛護センターでは2023年9月から、猫の殺処分ゼロを継続している。同センターによると、「本年度からミルクボランティア制度を設けたことで殺処分されてきた猫の多くを占める乳飲み子の子猫の世話をミルクボランティアが担っていることが大きな要因になっている」と話す。
昨年4月から11月までに同センターから42匹の子猫を受け入れてきた同団体。授乳期を過ぎても傷病などがある場合は引き出してシェルターで保護を継続している。シェルターでは獣医療の考えを取り入れながら常時40頭ほどの猫を保護していることから、猫の殺処分をなくすにはシェルターを拡充し、感染症を患う子猫を隔離スペースやダメージから回復させるための酸素室を設けるなど猫の福祉と体調管理の徹底が必要と判断した。
「避妊去勢クリニックの開業がゴールと考えていたが、不妊化手術の取りこぼしで不幸な命が生まれては消えていく現状に触れた」と振り返る山野さん。クラウドファンディング(CF)ではシェルター拡充と隔離室や酸素室の整備、補修などに必要な1,000万円を目標に協力を呼びかけている。「これまで殺処分がワーストトップクラスだった長崎を変えるには今しかない。まずは本年度の殺処分ゼロを実現し、継続していける環境をつくることで動物愛護の現状を変えていきたい」と意気込む。2月11日まで。