サウンド・インスタレーション「ジャネット・カーディフ『40声のモテット』」の展示が10月17日、長崎県美術館(長崎市出島町)で始まった。
カナダのアーティスト、ジャネット・カーディフさんが2001(平成13)年に発表した同作品。世界各地で展示され続け、日本でも2009(平成21)年に東京・銀座を皮切りに展示された。
2025年4月に開館20周年を迎えた同館では長崎大学や活水女子大学と連携して「イブニングライブ」を開催するなど、美術だけでなく、音楽鑑賞の機会を提供してきた経緯があり、3月から来年2月にかけて国内4美術館での巡回展の会場の一つになった。
会場では、楕円(だえん)形に並べた40台のスピーカーで、それぞれ異なる声部を再生。楽曲はルネサンス期イングランドにおけるルネサンス音楽の代表作の一つ、作曲家トマス・タリスの宗教合唱曲「我(われ)、汝(なんじ)の他に望みなし Spem in alium」(通称「40 声のモテット」)を使い、会場内を観客が自由に歩き回ることができるようにする。展示室内を移動しながら、立ち位置によって個々の歌い手たちの声と「親密にコネクト」しながら、音がどのように物理的に空間を構築するのかを体感できる14分間の没入型の作品(サウンド・インスタレーション)となっている。会場ごとに異なる音場に合わせトーンマイスターと呼ばれる専門家が緻密な調整を行う。「全ての歌い手たちの声が重なる瞬間、観客は、音の波に包まれる圧倒的な感覚を体験できる」という。音そのものが作品であることから、ジャネットさんの強い希望により、会場内では「おしゃべり禁止」のユニークなルールも設ける。
18日14時~15時30分には活水女子大学非常勤講師の米良ゆきさんによるレクチャー&ギャラリーツアーも行う。ルネサンスの宗教音楽や「モテット」という形式についての基本と共に、音楽史・音楽思想史的な観点から同作品について解説する。参加無料(観覧券が別途必要)。先着30人。
開館時間は10時~20時。観覧料は、一般=1,000円、大学生・70歳以上=800円、高校生以下無料。11月16日まで(10月27日、11月10日は休館)。